おだい
□キスに関する10のお題
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07.寝顔
「レイー…っと、何だよ、寝てるのか」
穏やかな昼下がり、チャドはレイの部屋を訪れた。しかし、彼はベッドに横になって寝息を立てていた。
特に用があったわけではない。ただ、暇な時間を恋人と過ごそうと思っただけだ。
チャドがベッドの横にまわっても、レイは起きなかった。いつもなら、すぐに目を覚ましてしまうのに。
(よく寝てるなー…)
こんな穏やかな寝顔は久しぶりに見た。
レイはいつも難しい顔をして眠っているから、彼の安心しきった表情は幼少時に見た以来なのである。
「可愛い、な…」
今も昔も。
確かに今は可愛くないことばかり言うようになってしまったが、根は素直で可愛いレイのままだ。
幼い頃やっていたように、その若草色の髪を撫でると、まるで時間が逆戻りしたかのような錯覚に陥った。
ずっと、レイが好きだった。だから、今恋人として一緒にいられることが嬉しいのだ。
「好きだぜ…レイ」
チャドは身を乗り出して、眠る少年と唇を重ねた。
触れた時と同様にそっと唇を離すと、翡翠の瞳がこちらを見つめていた。
「い、いつから起きてた…!?」
「お前が俺の頭を撫でたあたりからかな。…寝込みを襲うとはいい度胸じゃないか」
「な!?ち、違うって!」
チャドは自分でもおかしいくらいに焦って弁解したが、レイが意地悪く笑っているのを見て、自分がどれだけ滑稽かを悟った。
彼は、チャドにその気が無いことくらいわかっていたのだ。
「〜〜レイ、お前なあっ」
「ハハハ、チャド顔真っ赤だぞ」
適わない。
チャドはがっくりと肩を落とした。
が、直後に聞こえた言葉に勢いよく顔をあげる羽目になった。
「まぁ、俺は別に…お前なら、その、構わないんだけどな…?」
「っ!?」
半身を起こしたレイを覗きこむと、白い頬に赤みが差していた。
「レイ、それって…」
「〜っうるさい!」
見るな!と言って少年はチャドの顔を押し退けた。
自分で言って恥ずかしくなったのか、耳まで真っ赤になっていた。
その姿が、妙に可愛らしく映って。
ベッドに乗り上がって、レイを抱きしめた。
「好きだよ、レイ」
「…知ってるさ」
耳元で、レイはククッと楽しそうに笑った。
やっぱり、彼には適わない。
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