おだい

□小説書きさんに15題
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14:BGM



シュージンと福田さんが初めて顔を合わせてからしばらくして。僕には福田さんと二人きりで食事をする機会があった。食事、といってもお互い金銭的に余裕があるわけでもなく、某バーガーチェーン店に腰を落ち着けているわけなのだが。
店内には有名な歌手の新曲が、客の会話を妨げない程度の音量で流されている。

「真城くんってさぁ、」

「はい?」

アイスコーヒーを飲む手を休め、内心で身構える。福田さんとの付き合いは長いわけではないが、時折こちらがどきりとするようなことを脈絡もなく平気で口にすることを知っていた。

「高木くんのこと好きなわけ?」

「――ぶッ!!」

知ってはいた、が。耐性があるわけではないし、何より一番痛いところだった。飲み物を飲んでいなくて良かったと、心底思う。

「な、な、なんで…っ」

「その反応じゃあ答えたも同然だな」

くく、と楽しそうに笑う福田さんに、僕は反論することが出来なかった。鏡を見なくても自分の顔がどうなっているかわかる程度には熱を感じていたし、口を開けても上手く言葉にならなかった。――僕は動揺しているのだ。

「うんうん、やっぱそうなんだな。若いっていいねぇ」

もう何を言っても無駄だろう。僕は反論を諦めた。

「……そこまで歳は変わりませんよ」

「いやァ、心の問題だよ。で?もうちゅーぐらいはした?」

「………、いえ、まだ」

ますます頬が熱くなる。シュージンとのキス。ああ、幾度夢想したことか!
でもそんなことを言えば相手の思うつぼ、だろうから黙っていることにする。
いつの間にかBGMが流行りの曲に替わっていた。


「…なるほど、告白もまだか」

「え!」

なんでわかったのか、という心の声が顔に出たらしい。『見てればわかる』と笑われた。そんなに僕はわかりやすい人間だっただろうか。

「青春だねェ」

福田さんがカラカラ笑う。一方は笑い、一方は派手に赤面しているという状況は、端から見るとどう映るのだろう。
ともかく一旦落ち着こうと、少し氷の溶けたアイスコーヒーを呷る。途端、仕事場で飲むコーヒーの味を思い出して。

(――あ、……)

落ち着くどころかシュージンを鮮明に思い出してしまい。福田さんにバレないように温いため息を吐き出した。

「じゃあさ、高木くんのどこが好きなわけ?」

「…どこ…って、」

僕が話しだそうとした瞬間、狙ったかのように、店内のBGMが恋愛ドラマの主題歌に替わって。
しっとりした曲に包まれて、僕は固まり、福田さんは盛大に吹き出した。




END





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