文章♭
□出来損ないの散文詩
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※善←阿+球磨
※生徒会長はめだかちゃん
ああ、まただ。
ちくんと胸を刺した痛みに、周りに気づかれない程度に顔をしかめた。
視線の先には、めだかさんと人吉くん。
ここは生徒会室だから、二人がいるのは当たり前で、もっと言えば二人が仲睦まじげに話していても当たり前で。
それなのに――俺の感情はなんて醜いんだろう。
手元の書類を処理しながら、小さくため息を吐いた。
そもそも不毛だ。
人吉くんがめだかさんに好意を寄せていることは周知の事実だし、めだかさんも満更でもないんじゃないかと思う。そう認めるのは、俺としては複雑だけど。
何より不毛なのは、俺のこの感情が向かう先が人吉くんだってこと。
「『またため息』」
知らないうちに再びため息を吐いていたらしい。聞こえた声に、俺は我に返った。
「球磨川さん」
「『どうしたの?』『らしくないじゃん』」
「…そうですか?」
薄っぺらい虚勢は、球磨川さんには見抜かれているのだろう。含み笑顔で「『ふうん?』」と返ってくる。
それでも、素直に認めるわけにはいかなかった。認めてしまえば、今すぐにでも弱った顔を晒してしまいそうだったから。
そんな思いを知ってか知らずか、球磨川さんは別の話題を口にした。
「『あ、そうだ』『ねえ高貴ちゃん。今度の土曜日、空いてる?』」
「土曜日ですか?」
覚えている限りでは、何も予定はなかったはずだ。
「空いてますけど」
「『それならさ、ちょっと付き合ってよ』『行きたいところがあるんだ』」
「え? それなら俺じゃなくて、他の…例えば喜界島さんとかを誘ってみたらいいんじゃ…」
「『高貴ちゃん冷たーい』『僕と出かけるの、そんなに嫌なのー?』」
わざとらしい泣き真似をしながら、球磨川さんが腕に張りついてくる。ポーズだとわかってはいるが、彼のこういう部分は扱いにくくてしょうがない。
「嫌だなんて言ってないじゃないですか。…いいですよ、お供しますよ」
『やったー』と笑った球磨川さんから、ようやく腕が開放される。
まあ、俺としても嫌な気はしない。考えてみれば、球磨川さんと休日に会うのは中学以来なわけで。
あの頃とはいろんなことが変わったけれど、また一緒に遊びに行けるってことに不思議な感慨を感じる。
やれやれ、と苦笑した俺は、その時球磨川さんがどこを見ていたのか、まったく知らなかった。
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