文章♭

□モノクロ・アソート!〜黒猫編
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※ちょっとえちぃ。



スミオの両親とキリヲの父親に了解を得て、キリヲはスミオの部屋に泊まることになった。
と言うのも、キリヲが今の姿を家族に――と言うか父親に見られるのを、ひどく嫌がったせいである。

(まあ、確実にいじり倒されるよな…)

ギドウの姿を思い浮かべて、スミオはこっそり苦笑した。

「…スミの部屋も、フローリングなんだな」

部屋に入ってのキリヲの第一声に、スミオは意識を今に戻す。

「ああ、そう言えば『あっち』の家は古いアパートだったからなぁ」

コートを脱いだキリヲにクッションを渡すと、壁を背にして座った。
スミオの部屋にはカーペットが敷いてあるものの、床は畳より硬い。

「でもキリん家も洋風じゃなかったか?」

「だから、畳は新鮮だったんだ」

密かに畳の感触を気に入っていたらしいキリヲに、ついつい笑みがこぼれる。

それよりも――。

朝からスミオの興味を引き続ける耳としっぽ。
好奇心を抑えきれずに、キリヲの横にしゃがみこむ。

「…スミ?」

「なあキリ、学校でも言ったけど、ちょっと触らせてくれよ」

黒い猫耳がぴくんと揺れて、訝しげな表情になる。

「そんなにこれが気になるのか?」

「そりゃあもう!」

だって似合ってるし、なんか可愛いし!
…という本音は心の中だけで熱弁し、キリヲを見つめた。

キリヲという男は普段から気まぐれな猫みたいな奴なので、あまり違和感が無いのだ、というのは言い過ぎだろうか。

「フー……そこまで言うなら、構わないが」

「ほんとかっ!?」

スミオがあまりに熱心なので、キリヲが根負けする形で折れた。
きっと相手がスミオでなければ、決して許されなかっただろうが。

「ただし、痛くするなよ」

「わかってるって!」

そっと伸ばした手が、三角の耳に触れる。
猫耳は触られた感覚に一度だけ揺れたが、あとはおとなしくしていた。

「うわあぁ…」

漆黒の毛皮は艶やかで、まるでシルクのような質感だ。
指先で撫でると小さく揺れるのが愛らしい。
本当に猫を愛でているような気分になって、気がつけば頭全体を撫でていた。

「スミ。俺は猫じゃないんだぜ」

「今は猫だろ?」

「耳としっぽが生えただけだろ」

しっぽが不満げに床を叩くのがますます猫らしくて、スミオの頬は勝手ににやけていた。

「いやーかわいいなあ!」

聞く耳持たないスミオに、諦めの境地に達したらしい。
キリヲはひとつ息を吐いて、どうにでもしてくれとばかりの姿勢になった。

…が、しっぽに手を伸ばすと巧妙に避けられる。

「しっぽはダメなのか?」

「…俺は今、猫なんだろう?」

先程の台詞を逆手にとられ、スミオは口を尖らせた。

(確かに、猫はしっぽ触られんの嫌がるけど、)

さわりたかったのになあ、と呟くと、キリヲがシニカルに笑う。
なんだか負けた気分になって、スミオは反撃の手段を考えた。

「じゃあ、耳ならいいんだな?」

「……スミ?」

声に不穏なものを感じたのだろう、キリヲが見上げてくるが、スミオの心はもう決まっていた。

すなわち、耳を構い倒してやる!――と。

人差し指で縁をつう…っと撫でると、キリヲの肩が大袈裟に震えた。
逃げられないように片腕で抱きしめて、もう片方で耳をいじる。
爪の先でカリカリと引っ掻いていると、震える腕がスミオの胸を押した。

「スミ…っ」

「どんな感じ?」

「い、やだっ…」

逃れようとするキリヲに、普段の力は無い。
――獣の耳は、敏感に出来ているのだ。
これ幸いと、スミオは親指で耳の内側をなぞった。

「ゃ、あ!」

キリヲの身体がびくりと震えて、スミオの胸元を握りしめる。
その姿に、スミオの中で別の感情が大きく膨れて、ますます悪戯をやめられない。

「キリ…」

「ん…っ」

声と吐息を一緒に吹き込む。
すっかり意図が変わっていることに、キリヲも気付く。

「なに…その気になってるんだっ…」

「だって、キリが可愛いから…」

「何言って、っ」

内側を引っ掻かれて、耳はとうとうぺたんと伏せてしまう。
赤い瞳は潤んで揺れている。

「……馬鹿スミ」

たまらなくなったスミオが耳を甘噛みする頃には、黒猫は腕の中ですっかりおとなしくなっていたのだった。




END




なでなでスリスリして終わるはずが、スミオが暴走しました。
でもあれだよね、猫耳いじりはロマンだよね…!
↑趣味が完全に露呈


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