文章♭
□彼の愛し合う二人のようには成れない
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*拍手ログ
7月7日――七夕。
今日も明日も学校だけど、頼み込んでどうにかヒバリさん家にお泊まり出来ることになった。
リボーンにその旨を伝えたら『意外とロマンチストなんだな』とニヤリと笑って言われた。そんなんじゃない、と反論したけど。
多分リボーンには、俺がどうしてヒバリさんと過ごしたくなったのか、わかったんだろう。
一旦家に帰って着替えて泊まりの用意も整えて、手土産に母さんお薦めのお菓子なんか持ってヒバリさん家を訪ねる頃には、もう日も暮れていた。
で、ヒバリさんお手製の夕食をいただいたあと、今はソファーの上でくつろいでいるわけなんだけど。
「うーん、天の川…は、見えませんね」
俺の言葉に反応したのかはわからないけど、何故かカレンダーをじっと見つめていたヒバリさんが、不意にこっちを向いた。
いつになっても、あの瞳に見つめられると無駄にドキッとする。
「沢田」
「はい?」
「今日、君がどうしても泊まりたいってごねたのは、七夕だからなの?」
「そ、そうです」
ふうん?と言って首を傾げるヒバリさん。
「うちには笹も短冊も無いよ」
「…俺は幾つだと思われてるんでしょうか」
ああ、そんなヒバリさんも素敵です、けど。
いくらなんでも、七夕飾りではしゃぐような歳じゃない。女の子が楽しむんだったら幾つになったって可愛いと思うけど、俺には流石に無理だ。
「じゃあどうして」
「いや、なんとなく…」
あ、ヒバリさんの目が誤魔化すな、って言ってる。バレバレですか。
絶対くだらないって言われると思うから、言わないでおくつもりだったんだけど。
「…織姫と彦星にあやかろうと思いまして」
「どういう意味?」
「あの、織姫と彦星が一年に一度だけ逢うこの日に、俺もヒバリさんといちゃいちゃしたいなーなんて…」
「ばかじゃないの」
あ、一蹴ですか。
「どうせ『俺だったら耐えられないなー』って考えて寂しくなっちゃったんだろ」
「! なんでわかったんですか!」
「君の考えそうなことなんて大体わかるよ」
俺ってそんなにわかりやすいかな…。
ちょっと凹んでいると、ヒバリさんが口を開く。
「…僕だったら、そんな状況は耐えられない。天帝だろうが何だろうが、そんなのは咬み殺せばいい」
思わずぽかんとヒバリさんを見つめてしまう。
だってなんだか、らしいようでらしくない台詞だったから。
多分間抜け面を晒しているだろう俺に、ヒバリさんはちょっと笑って。
「だって、逢いたいときに逢えないなんて、嫌じゃないか」
その意味、わかるだろう?とあまく囁かれて。
「ひ、ひ、ヒバリさぁんッ」
あまりの嬉しさに、思わず彼の細い身体に飛びついていた。
…すぐ引き剥がされたけど。
それでも俺の頬が緩んでくのは止められなくて、ヒバリさんはちょっと呆れた顔をした。
だってだって、しょうがないじゃないか!そんなこと滅多に言ってくれないんだから!
――ねえ、だってそれって、ヒバリさんも俺と同じ気持ちってことでしょう?
彼の愛し合う二人のようには成れない
(だって我慢なんて出来ないから!)
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