文章♭
□きっと薄紅の花が咲く
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※捏造もいいとこ。
※M髑と言うかM→髑と言うか。
一歩進めば、相手は一歩下がる。その繰り返し。
一向に距離が縮まらないことに、M・Mは焦れていた。
「私、あんたが嫌いだわ」
M・Mがそう言えば、言葉を投げ掛けられた相手、クローム髑髏は悲しげに目を伏せた。
「……そう」
しかし、髑髏はそれきり口を閉ざした。理由も何も、訊かない。
嘘なのに。本当は好意を持ってすらいるのに。
M・Mは片眉を上げる。
「何も訊かないのね」
ちらりとM・Mを見上げ、また伏せる。それからようやく口をひらいて言うことには。
「…慣れてる、から」
何でもないことのように言うが、その顔は痛みを耐えるように歪んでいた。
嘘がへたね。M・Mは密かに思う。
この少女はこれまでずっと孤独だった。『クローム髑髏』として“生まれ変わって”、初めて仲間というものを知った。
でも、まだ人の暖かさに慣れないでいる。そこに浮かぶのは戸惑いだ。甘受していいものか、怖れと喜びを抱えて。
「ばかね」
髑髏が小さくぴくんと震える。
ばか。胸の中で繰り返す。
嫌いと言われて、傷つかないはずがない。それは何度言われても、心を失わない限り、慣れるものではないのだ。
突然嫌いだと言われても、理由一つ問わない問えない。そうなってしまっている目の前の少女に、M・Mは一抹の寂しさを感じた。
(もうあんたは一人じゃないのに。クローム、あんたは人に寄り添うことを知らないのね)
自分の爪先を見つめて、瞳を揺らす髑髏。その華奢な躯が、言い様もなく切なかった。
どうしたら、彼女に言葉が届くのか。M・Mが出来ることはひとつだけ。
――正直な気持ちを伝えること。
「…ねえ、嫌いなんてうそよ、クローム」
髑髏がおもむろに顔をあげる。紫紺の瞳は呆然とM・Mを映した。
「私は、あんたが好きだわ」
信じてくれなくてもいい。ただ知っておいてほしい。
あなたを大切に思う人間がいるんだってこと。目の前にいるこの私は、あなたに惹かれているんだってこと。
伝えれば、髑髏は言葉を噛み締めるように目を伏せて、ほのかに紅潮した頬を緩めた。
その控えめな笑顔は綻ぶ花弁にも似て、M・Mの胸を揺るがしたのだった。
End
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