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□『将来の夢』
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学校までの道を、青峰とふたりで歩いている。
示し合わせたわけではなく、たまたま会っただけ。でも、お互いでなければ同行はしなかっただろう。
「なあ、今吉サンは、おーきくなったら何になんの?」
「大きくなったら?…せやなあ、」
青峰の言う『大きくなったら』は、たぶん高校卒業後の、将来の展望のことだ。それならば、そんなに考えこむ必要もない。
「大学行って、社会人になる」
「うっわ、夢のねえ答え」
笑われて、些かムッとする。夢がないと言われればその通りであるが、一般的かつ現実的な回答だと思う。
「そう言うオマエは、どないな大人になるつもりや?」
「んー?……ナイショ」
何がナイショやねん、と笑いながら言うと、青峰もいたずらっ子みたいな顔で笑った。
――将来、なんて。
今が精一杯で、何も考えられない。
『オトナになった自分』なんて、予想もつかないのが正直なところだ。
……大人になったら。この手を放すときが、来るのだろうか…。
「…なんか意外。今吉サンって、そーいうのきっちり考えてるんだと思ってた」
「ワシってどんなイメージなん?」
「えー、だって仮にも受験生だし?」
「仮にもは余計やアホ」
先の見えない未来のことを考えていたら、無意識のうちに沈んでいたらしい。
青峰の軽口になんだかほっとした。
(まあ、本人にそういう意図はないんやろうけどなあ)
何気に、青峰といるのは気が楽だ。気を使う必要がないかもしれない。(ただ他のやつに言うと、そんなのアンタだけだ、なんて返ってくるわけなのだが)
だから、そう、出来ればいつまでも――
「今吉サンさあ、将来の夢、『青峰大輝の嫁』にしとかねえ?」
「…アホか!」
嫁ってなんや嫁って。
ツッコミながらも、笑ってしまう。思考がシンクロしたのが、やけにおかしくて。
ついでに言うと、悪くはないな、なんて考えている自分がいる。
否定しないワシに、青峰も嬉しそうに笑う。
――せやな、オマエがこの手を離さんでいてくれるんなら、考えてやらんこともないわ。
END
今吉さんは青峰の嫁\(^o^)/
…を基本に、ちょっと高校生らしさをだそうと努力した。
空回った。←
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