文章Θ

□5:09a.m.
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*拍手ログ





ふと、意識が浮上した。
目を開けると、まだ部屋は薄暗い。けれど、カーテンから漏れる光の気配に、今が明け方なのだと理解した。

ここは見知った他人の部屋で、ボクの隣にはぬくもりが在る。端的に言えば、ここは恋人の部屋で、恋人とはつまり、ボクに寄り添って眠っている、黄瀬君のことだ。

ボクは半身を起こして、小さく伸びをした。まだ起きだすには早い時間だが、あまり寝直す気がしない。
しかし行動を起こす気にもなれなくて、手持ちぶさたなボクは隣の黄瀬君に視線を移した。彼はまだ健やかな寝息をたてていて、目覚める様子はない。

――新鮮だな、と思う。

大抵の場合、黄瀬君のほうが先に眠り、そして先に起きる。だから、寝顔を見たことはあっても、こんな風に眺めたことは無かった。

(なんだか、……)

無防備な顔で眠る黄瀬君。まだ明るさの足りない部屋に浮かび上がる白い頬。
そこに、愛しさが湧きあがるのを感じた。

よく黄瀬君は、ボクが起きるのをにこにこしながら待っていて、目が合った瞬間にきれいな笑顔で「おはよう」と言ってくれたりするのだが、あの微笑みの意味がようやくわかった気がする。

(キミも、こんな気持ちだったんですね)

そっと手を伸ばして、輪郭を確かめるように触れる。そして指でなぞったそこに、今度は唇で触れた。やさしく、一度だけ。
他意はなく、まるでそうするのが自然だというように、身体が動いたのだ。

それが合図だったかのように、黄瀬君がゆっくり瞼を開いた。その何気ない仕草を美しく感じて、ボクは目を細める。

「ぅ……ん、くろこっち…?」

「おはようございます、黄瀬君」

まだ眠っていていいですよ、と恋人に微笑みかけるボクの顔は、きっとあの笑顔のように、優しい形になっていることだろう。



END




タイトルは某女性歌手の楽曲から。



Blue

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