文章Θ

□ジャムが足りない
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※(たいしたことはないけど)18禁につき、実年齢18歳未満の方は回れ右。
















(あー……)

黄瀬は一人、部室のロッカーを背に腰を下ろした。
もう今日の部活動はとっくに終わっていて、部室にも体育館にも他の生徒の姿は無い。

黄瀬はこのところ、こうして部活が終わってからも残って自主練をしていた。
それは勿論試合に勝つための練習なのだが、今の彼の思考は違う事柄が占めている。

ストレートに表すならば、欲求不満。
躯に宿る熱を持て余している状態だ。


ところで、黄瀬が黒子と付き合い始めてもう数ヶ月になる。
ほとんどが黄瀬からではあるが、手を繋いだり、キスをしたりは普通にする。

問題はそれ以上。
つまり、性的な行為はまだ一度もしたことがないのである。

そういう気分にならなかったと言えば、嘘になる。恋人を目の前にしたら欲求が湧くのは自然なことだ。
しかし、黄瀬から手を伸ばそうとは考えられなかった。

(だって黒子っちはなんか、汚しちゃいけないような、気がするんだ)

想像の中でさえ、黒子を汚すことを厭って。最近は自慰行為すらしていない。
しかし黄瀬の意思に関係なく、熱は蓄積していくので。

渦巻く熱をどうにかしたくて、運動で昇華しようと頑張っていたのだが……。

(もう、限界)

黄瀬はゆっくり、手を下肢に滑らせた。
しばらく触れていなかったそこは、簡単に熱を宿す。

「ぁ……」

布の上から擦るだけでは物足りなくて、ハーフパンツと下着を膝近くまで下ろし、直接触れる。
望んだ刺激に、腰がピクリと揺れた。

「ふぁ、ん、ン…」

熱に浮かされたように、夢中で自身を擦る。声を出してはいけないと思い唇を引き結ぶが、あまり効果はないかもしれない。
混濁していく脳内に、人影が浮かび上がる。

「く、ろこっち……」

その声がとても甘くかすれていることに、彼は気付かない。ただただ夢中で、黒子の姿を追い続ける。

「はァ、ぅ…ッ」

触れたい。触れられたい。
彼の熱を感じたい。
黒子が相手なら、受け身にまわってもいいとすら考えている。

それはすべて、彼を想うがゆえ。

「ぁ、ぅん…ッ」

もうすぐ絶頂に手が届く――その時だった。突然、黄瀬の躯に影が落ちた。

(え……っ)

一気に現実に引き戻される。いくら手淫に耽っていたからといって、人の気配に、ドアの開閉に気が付かないなんて。

(そんな、まさか。)

そこで一つの可能性にたどり着き、黄瀬は恐る恐る顔を上げた。

「…黄瀬君」

果たしてそこには、黒子が立っていた。

「黒子っち…! あ、やっ、これは…!」

慌てて膝を引き寄せ、縮こまる。恥ずかしさと情けなさで、顔に熱が集まる。

(こんなとこ、見られちゃうなんて…!)

黒子をまともに見られずに俯いていると、彼が思いがけない行動に出た。

「あっ…!?」

黄瀬の閉じられていた膝をぐっと開き、蜜をこぼす下肢を握りこんできたのだ。
敏感になっている場所への突然の刺激に、目を見開いた。

「キミがいけないんですよ。…こんなところでそんな声を出して」

「なっ、黒子っち…!?」

黄瀬が押し返す前に、あろうことか黒子は中心を扱きはじめたのである。
肩に置いた手は、縋りつくしか道が無くなる。

「あ、あぅ…ッ」

「さっきこうやってましたよね? ここが気持ち良いんですか?」

「ふああっ、だめっス、黒子っちッ…」

先程絶頂寸前まで高められた躯は、もうすぐにでも達してしまいそうだ。それをどうにか耐えようと、嫌々をするように首を振る。
その様子を見て、黒子が眼を細めた。

「もうイキそうなんでしょう? 我慢しなくていいんですよ」

「でも、ン、だめっ。くろこっち、よごしちゃ…っ」

「…………」

黒子はきょとんとした後、合点のいった顔で黄瀬の耳元に唇を寄せた。そして。

「かわいい、黄瀬君……イクとこ見せてください」

「―――ッ!」

囁くと同時に、先端を抉る。
自身を襲う刺激と声に、黄瀬はとうとう陥落した。

「ひゃ、あああ……ッ!」

びくびくと躯を震わせ、黒子の手の平に熱を吐き出したのだった。




----------------




簡単に体液を拭い、身なりを整えて。そこはかとなく気まずいような雰囲気が流れる中。
口火を切ったのは、黄瀬の方だった。

「どうして、ここに?」

その問いが予想外だったのか、黒子は少し物珍しそうな目で黄瀬を見た。

「どうしてって。キミが言ったんですよ、誠凛まで迎えに来るって」

「……あ!」

すっかり忘れていたが、今日は黒子を家に招く約束をしていたのだ。
黄瀬が言い出したことであるだけに、申し訳なさで一杯になる。

「ご、ごめん黒子っち…」

「構いませんよ。可愛い黄瀬君も見られましたし、ね」

「う…!」

ひいたはずの頬の赤みが、また戻ってきてしまう。
するとそれをなぞるように、黒子が頬に触れた。

「、黒子っち?」

「さっき、ボクのこと呼んでくれてましたよね?」

「!」

呼んだ。確かに呼んだ。
熱に浮かされながら、求めるかのように。

羞恥に耐えて頷くと、嬉しかったです、と返ってきて。

「ねえ、黄瀬君?」

耳元で囁かれた声に、もう頷くしかなかった。
羞恥と、それを上回る期待。そして、黒子も自分との触れ合いを望んでいるという喜びで、胸がいっぱいになる。

「…えと、じゃあ、帰ろっか」

「はい」

ぱちんと明かりを消して、部室をあとにした。

夜の暗がりの中で、ふたつの影がひとつになったのを、星だけが見ていた。



END



(てか黒子っち、いつから見てたんスか…?)
(キミがハーフパンツを脱ぎだしたあたりですけど)
(ほぼ最初からじゃねっスか!!)




黒子が何て囁いたのかは、ご想像におまかせします^^

タイトル提供元:joy



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