文章Θ

□企画提出
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そんなんじゃないと思ってた。
こんな風に誰かに執着するなんてあり得ないと。

でも。
自分で思うより、オレはフツーの男子高校生だったらしい。





きみ不足が深刻です





最近どうにも落ち着かない。
ダリィのはいつものことだが、なんかこう、あるべきものがないような感じ。
その原因なんて、考えるまでもなくわかってる。
あの人の、せいだ。

(――今吉サン)

少し前。好きだ、付き合ってくれと告白して、ええよと返事をもらった。
それからオレ達は付き合っている、……はずなんだが、何もなさすぎて、告る前と変わってない気がする。

距離は近くなったと思う。
けど、それだけじゃ。

(満足なんか、出来ねえ)




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放課後になって、体育館に向かった。
考えてみれば、もっと早く行動するべきだった。むしろ今までよく何もせずにいられたな、と思う。
ガラリと戸を開けると、近くにいた数人が振り返って、ぎょっとした顔をする。
けどそんなのは無視して目的まで一直線。
目当ての人物は、コート脇でマネージャーと何やら話していた。

「今吉サン、」

オレの接近に気付いて顔を向けた彼の腕を掴んで、引っ張る。

「え。ちょっ…青峰?」

「ちょっと来て。さつき、今吉サン借りんぞ」

「う、うん」

何かを察したのか、さつきはうるさく言うこともなくオレ達を見送ってくれた。




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そうして、今吉サンを引っ張ってきたのは体育館裏。
告白やらカツアゲやらでよく使われるスポットらしいが、幸い人気はない。

「どないしたん、青峰?」

今吉サンはあくまで穏やかに訊いてきた。
無理やり連れてこられたのに、文句の一つも言わずにオレの動向を伺っている。
オレは彼のそういうところも気に入っていて、だから隣に置いときたい。

――そう。
言いたいことはいろいろあるけど、今伝えるべきは一つだけ。

「足んねえ」

「は?」

なんだかこの距離さえもどかしくて。乱暴に肩を抱き寄せて、薄い唇を奪った。

「アンタが、足んねえんだよ」

挑みかかるように、レンズの奥を見つめる。
細められた目の奥で、瞳が揺れたように見えた。

「青峰…」

しばらく呆然とオレの顔を見ていた今吉サンが、顔を伏せる。
腕の中に抱いたままだから、額が肩に当たる。

「く、」

く?
何か言ったのかと思って覗き込もうとしたが、ふと、密着したままの身体に振動が伝わるのを感じた。

「くくく…っ」

って、コイツ、笑ってやがる…!

「………なんだよ」

つい憮然とした声が出てしまう。
その拗ねたような(別に拗ねてないけど)響きに気がついてか、今吉サンが笑いを収めた。

「はは、スマンスマン。なんや、オマエもかわええとこあるやんか」

その言葉をどう受け止めていいかわからず、ますます機嫌が下向きになる。
それがわかったのかは知らないが、オレの腰上あたりに腕が回された。
客観的に見て、抱きしめ合ってるような、格好。

「つまり青峰は、恋人らしいことがしたかったんやろ?」

「…悪ィかよ」

ちょっと癪だが、素直に認めてやれば。

「いや、悪ないわ」

顔をあげた今吉サンは――なんかすごくキレイに笑っていて。
不覚にも、ドキッとした。

「ワシはの、青峰はそういうん、興味ないんやと思うとってん」

一緒に登下校したりとか、一緒に食事をしたりとか、抱き合ってキスをしたり、とか。
一緒にいたい、触れ合いたい、という欲求の具現。

――そっか、今吉サンはオレが『フツーのオツキアイ』を望まないんじゃないかって思ったんだな。

「やから、…なんや嬉しいわ。あの告白も、青峰の気まぐれやないんやってわかったし」

そう言ってオレの肩に頭を擦り付ける今吉サンが、なんだか甘える猫みたいに見えて。

「今吉サン。顔、あげて」

衝動に負けて、もう一度。今度は食らいつくみたいに、唇を重ね合わせた。



END




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Project of 桐皇』さまに提出しました。

書き終えて思ったけど…そんなに深刻そうじゃないですね。
青峰に余裕は無さそうだが(^^)

そんな青峰に対して今吉さんが落ち着いてますが、余裕のある年上受けが大好物だからです。
でもうっかりペースを崩される年上もそれはそれで萌えr←

読んでいただきありがとうございました。そして、素晴らしい企画を立ち上げてくださった辰季さまにもお礼申し上げます!


おまけ


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