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□赤ずきんちゃん!-another-
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*拍手ログ
※15歳未満は回れ右。





あるところに、それはそれは逞しい男の子が住んでいました。
男の子はいつも赤い頭巾をかぶらされていたので、近所の人たちには『赤ずきんちゃん』と呼ばれ、可愛がられていました。


ある日。森の奥に住んでいるおばあさんが寝込んでしまったと連絡が入りました。
最初は渋っていた赤ずきんちゃんですが、お母さんに脅され…もとい頼まれ、おばあさんのお見舞いに行くことになりました。

「いーい赤ずきんちゃん! 森の中には人懐っこい狼が出るって話だけど、ケンカは売らないでまっすぐおばあさんのところまで行くのよ!」

お母さんにバニラシェイクと小説の入ったバスケットを押し付けられ、赤ずきんちゃんは渋々森の中へと入っていきました。




森の中は光が降り注いでいて、存外明るい雰囲気です。赤ずきんちゃんは何度もおばあさんの家に行ったことがあるので、迷わず道を歩きます。
途中、綺麗な花が咲き乱れる花畑を通りかかりましたが、特に寄り道はしませんでした。何故なら、ちっとも興味がなかったからです。
赤ずきんちゃんは脇目も振らず、淡々とおばあさんの家に向かいました。




道中狼さんに会うこともなく、赤ずきんちゃんは無事におばあさんの家に辿り着きました。呼び鈴を鳴らす…のではなく、豪快に扉をノックします。

『…どなたですか?』

「オレだ。開けろ」

『……あー、今取り込み中なんで、あとにしてもらえますか?』

「はぁ!?」

寝込んでいるのに取り込み中も何もあるものか、と思い、ノブに手を掛ける赤ずきんちゃん。鍵はかかっていなかったらしく、扉は簡単に開きました。おばあさんは――。

「あ、あ、やぁん!」

「……火神君…。だから取り込み中だって言ったじゃないですか…」

おばあさんは、狼さんを食べていました。

「……。オレ、黒子が寝込んでるって聞いたんだけど…?」

「…? ああ、電話でカントクに『煮込んでるポトフがちょっと量が多くて食べきれそうにないので、夕食にでも火神君を寄越してください』とは言いましたが?」

「……カントクめ…」

告げられた事実に、赤ずきんちゃんは思わず脱力しました。
おばあさんの体調不良は、どうやらお母さんの聞き間違いだったようです。そういえば電話を受けたとき、お母さんは別の事に夢中だった気がします。
赤ずきんちゃんがため息をつくと、ベッドに縫い止められている狼さんが、顔を赤くして、枕に顔をうずめました。

「…黄瀬君?」

「あっ、やぁ…! 黒子っちぃ、おねが、抜いて…!」

敏感なのでしょう。おばあさんが少しみじろぐだけでも、狼さんは躯を震わせます。

「どうしてですか? 今抜いたら、お互い辛いだけですよ」

「ひゃ…! あ、だって…このままじゃ火神っちとお話、出来な…ッ!」

「…や、黄瀬。いいよ、また晩飯ン時来るから…」

狼さんが潤んだ瞳で赤ずきんちゃんを見て、すまなそうな顔をしました。
赤ずきんちゃんはそーっと後ろに下がり、そーっとおばあさんの家を出て、そーっと扉を閉めました。
仮に二人が行為をやめて話す体勢になったとしても、まともな会話になりはしないと、赤ずきんちゃんにはわかっていたからです。

「…さーて、晩飯まで何すっかなー…」

とりあえず、一旦家に戻って考えようと、赤ずきんちゃんは甘い声が漏れる家の前から歩きだしました。




その晩。宣言通りに赤ずきんちゃんは再度、森の中の小さな家を訪れました。そこにはまだ狼さんがいたので、おばあさんと三人で食卓を囲みました。

「そういえば、なんで鍵かけてなかったんだよ?」

「この家に鍵なんてついてませんよ」

「「えっ!?」」

…こうして、夜は更けていくのでした。




おしまい



《キャスト》
赤ずきん:火神
狼:黄瀬
おばあさん:黒子
お母さん:リコ



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