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□赤ずきんちゃん!
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*拍手ログ






あるところに、それはそれはかわいらしい、語尾に『〜っス』とつける癖のある男の子が住んでいました。
男の子はいつも赤い頭巾をかぶっていたので、近所の人たちには『赤ずきんちゃん』と呼ばれ、可愛がられていました。


ある日。森の奥に住んでいるおばあさんが寝込んでしまったと聞いて、赤ずきんちゃんはお見舞いに行くことにしました。
お母さんに何も言われてないけれど、バスケットにバニラシェイクと小説を詰め、森の中へと入っていきました。

「え、ちょ、こら黄瀬ェ! 勝手に行くんじゃねぇぇ!」

お母さんの声は、残念ながら赤ずきんちゃんに届きませんでした。




森の中は光が降り注いでいて、存外明るい雰囲気です。赤ずきんちゃんは何度もおばあさんの家に行ったことがあるので、すいすい道を歩きます。
途中、綺麗な花が咲き乱れる花畑を通りかかりましたが、特に寄り道はしませんでした。花を持っていっても、おばあさんは別に喜ばないことを知っているからです。

(待っててね黒子っち、今行くから!)

赤ずきんちゃんはだんだん歩く速度を上げながら、一直線におばあさんの家に向かいました。




狼さんに会うこともなく、無事におばあさんの家に辿り着いた赤ずきんちゃん。早速呼び鈴を鳴らします。

『どなたですか?』

「黄瀬っス!入ってもいいっスか?」

『どうぞ。開いてますよ』

扉を開けると、おばあさんはベッドに腰掛けて本を読んでいました。特に変わった様子はありません。

「あれ…? オレ、黒子っちが寝込んでるって聞いたんスけど…」

「ああ、それ嘘です」

「へ?」

さらりと告げられた事実に、バスケットをテーブルに置いた格好で固まる赤ずきんちゃん。
おばあさんが立ち上がり、赤ずきんちゃんに近付きます。

「…黄瀬君に、会いたかったので」

「黒子っち…」

おばあさんの言葉にときめいた赤ずきんちゃんは、おばあさんの唇がゆるく弧を描いたのには気が付きませんでした。

「…黄瀬君。どうしてキミはそんな格好をしているんですか?」

「えっ?」

これまで触れませんでしたが、今の赤ずきんちゃんは白いワンピースに赤いケープをはおり、白いタイツに赤い靴を履いた、少女のような格好なのでした。
きょとんとする赤ずきんちゃんの脚をするりと撫で、おばあさんは続けます。

「っひゃ…!」

「どうしてキミの瞳は、そんなに潤んでいるんですか?」

「ちょ、黒子っち…?」

なおも体を這うおばあさんの手に身を震わせながら、赤ずきんちゃんはおばあさんの顔を伺います。
おばあさんの目はいつもと違う光を放っていて、まるで狼さんのようでした。

「どうしてキミの体は、そんなに美味しそうなんですか?」

「ぁ……っ!?」

気が付けば、赤ずきんちゃんの体はベッドに縫い止められていて。

「ボクに、食べられるため…?」

おばあさんがそっと、その白い首筋にかみつきました。




しばらくして。森の中の小さな家からは赤ずきんちゃんの甘い声が聞こえてきましたが、猟師さんはおろか、狼さんでさえ、そこには近付きませんでした。

「「だって、邪魔をして黒子を怒らせる方が怖いし(のだよ)」」

かくして、おばあさんは誰にも邪魔されることなく、赤ずきんちゃんとの遊戯を愉しんだのでした。




おしまい



《キャスト》
赤ずきん:黄瀬
おばあさん:黒子
お母さん:笠松
狼:火神
猟師:緑間



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