文章Θ
□恋愛処方箋
1ページ/1ページ
※15歳未満は回れ右。
どうして、こんなことになったのだろう。
ウォルトは掻き消されそうな意識の中で考えていた。
恋愛処方箋
『いいお茶の葉を貰ったんだけど、一緒に飲まない?』とロイに誘われて、この部屋に来たのが数十分前。
ロイが入れた紅茶(自分が入れるとウォルトは言ったのだが、断られた。いつものことだ)を飲みながら談笑していたら、急に体に力が入らなくなり、椅子から落ちてしまったのが数分前。
寄ってきたロイに抱き上げられ、ベッドまで運ばれて、今に至る。
「何考えてるの、ウォルト?」
「ひぁっ!」
急に首筋に口づけられて、思わず声をあげてしまった。
ロイはその声に気をよくしたらしく、そのまま強く吸われ、赤い跡が残った。
未知の感覚から逃れようと身を捩るが、ロイの手はそれを許してくれなかった。
「あっ!あぅっ…」
胸の突起を撫でられて、背筋を電流のようなものが走る。
それと同時に、下半身に熱が集まってくるのを感じた。
「へぇ、男でも、ここは感じるんだね。それとも、ウォルトが感じやすいだけ、なのかな?」
「ふぁ、や、やだっ…」
体が熱い。
ロイの手は更にするすると下へ行き、既に反応を示し始めているウォルトの中心を握った。
「あっ、ロイさま…っ!?そんな…あぁっ!」
信じられなかった。
自分でも滅多に触らないそこを、まさか他人に、それも敬愛する主君に触れられるなんて。
「やぁ、はぁあっ…!」
濡れたそこをロイに握られて、ウォルトは意識が混濁していくのを感じていた。
それにしたって、何でいきなりこんなこと。
この行為の名前がわからないほど幼くもないが、主君と従者という関係で、しかも男同士で、となると、ウォルトがすんなり受け入れられるはずもなかった。
「やっ…駄目です、ロイさま…んぁッ!」
「駄目、じゃないだろ?こんなになってるのに」
「やぁぁ…っ」
心ではこの行為をやめさせたいと思っているのに、身体は熱くなっていく一方で、既に自身は解放を望んでいる。
それはどうやらロイにも伝わってしまったようで、彼の顔に笑みが浮かんだ。
「ウォルト、イきたいならイっていいよ。辛いでしょ?」
それでもウォルトは首を振って刺激に耐える。イってしまったら、何かが壊れてしまいそうな気がしたのだ。
そんなウォルトの様子を見ていたロイが、ふと悪戯を思いついた子供のような顔になった。
「ひゃう!!な、何…っ!?」
自身が何か生温かいものに包まれて、ウォルトは悲鳴に近い声をあげた。見れば、なんとロイが自身をくわえているではないか。
ロイの舌が、先走りの液を舐めとるように動く。その度にウォルトの身体は震え、限界を訴える。
そして、先端を軽く吸われた瞬間、ウォルトは呆気なく達してしまった。
「ウォルト、可愛い…」
「はぁ、はっ…ぁ…」
一回達したというのに、ウォルトの身体はまた熱を帯び始める。
「どう、して…」
自分が、自分でなくなってしまうような感覚。
どうしようもなく恐くて、涙が溢れるのを止められなかった。
「ロイさま…っ」
「! ウォルト!? どうしたんだい? どこか痛かった?」
焦った様子で覗きこんでくるロイに、違うと首を横に振った。
「恐い、です…。体が、変で、自分のじゃ、ない、みたいで……」
恐い、ともう一度呟くと、額に柔らかい感触が降ってきた。
驚いて目を閉じれば、今度は目蓋に。次いで、体を抱きすくめられる感覚。
目を開けると、怒られた子供のような顔をしたロイがいた。
「ロイさま…?」
「ごめん。ごめんね、ウォルト…。自分のことばっかりで、ウォルトの気持ち、全然考えてなかった…」
そう言って、ロイは唇でウォルトの涙の跡をなぞった。
涙はいつのまにか止まっていた。
「ウォルトがなかなか分かってくれないからこんなことしたけど、ウォルトを傷つけたかったわけじゃないんだ」
「え? それって…」
どういうことですか、と続くはずだった言葉は、唇をロイのそれで塞がれた為に言えなかった。
「好きだよ、ウォルト。こういう意味で、ね」
もう一度唇が重なって、ウォルトは漸く理解した。
何度も言われてきた『好き』は、親愛のそれではなかったのだということを。
そして、ひどく恥ずかしくなった。
どうして今まで気づかなかったのだろう?
…自分の想いに。
「僕も、ロイ様を…想っています」
ウォルトとて、ロイが好きだったのだ。そうでなければ、いくら主君と言えど、こんなことを甘受することは出来ないだろう。
「え、ウォルト…本当!?」
「…嘘でこんなこと言えませんよ」
赤くなってしまった頬を直視されたくなくて顔を背けると、ロイが笑ったのが気配でわかった。
「こっちを向いてよ、ウォルト」
それでも顔を向けられずにいると、ロイの手でそっと顔を動かされた。
「あ…」
「ウォルト、ありがと。すごく、嬉しいよ…」
言葉と共に降ってきたのは、触れるだけのフェザー・キス。けれど、ロイの気持ちは十分に伝わった。
「はい…僕も嬉しいです」
ふわりと笑みを浮かべれば、相手からも笑顔が返ってきた。たったそれだけのことだけれど、それがとても嬉しいと、幸せだと感じた。
だから。
「じゃあ、続き、イイ…?」
「……はい」
羞恥に染まりながらも、ちゃんと応えることが出来た。
------
前の日の夜。
「ロイさま、例の媚薬入り痺れ薬、調合出来ましたよ」
「本当ですか!? ありがとうございます、サウルさん!!」
「ええ、分量の関係で効果は薄くなってしまいましたが…」
「十分ですよ! じゃあ、僕はこれで…」
「頑張ってくださいね」
「…あ! サウルさま、やっと見つけた! あれ、ロイ様? 何を話してたんですか?」
「おや、ドロシー。処方箋を渡してたんですよ。彼の恋がうまくいくようにね」
END
Blue