文章♯

□マーブル模様の恋情
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ノボリは困っていた。
目の前には、つんと横を向いて頬を膨らませているクダリ。彼の機嫌をすっかり損ねてしまったのである。

「…人気のお店の限定プリン」

「本当にごめんなさい、クダリ。消費期限が今日だったものですから、無駄にしては勿体ないと思いまして…」

「だから、今日食べようと思ってたのっ」

プリンひとつで大人げないと思われるかもしれないが、プリンはクダリの大好物なのだ。それを知っているから、ノボリも強く出られない。
ノボリにとっては、クダリが笑っていてくれることが何より大事なのだった。

「クダリ…」

「やだ、許さない」

明日は休み。久しぶりに二人でゆっくり出来る夜なのに、このままでは無為になってしまう。

「…どうしたら、許していただけますか?」

縋るような口調に、ようやくクダリの顔がノボリのほうを向く。
しばらく考える素振りを見せたあと、出てきた言葉は。

「じゃあ、夜の役割交替」

「え!!」

それはつまり、今度からノボリが抱かれる側になるということ。
冗談かと思い目を見つめるが、そこにふざけている色はない。クダリは本気だ。

正直に言って、クダリを可愛がれなくなるのは辛い。乱れるクダリは本当に可愛くていやらしいとノボリは常々思っていて、逆になるなんて考えたこともなかった。
(嗚呼、けれどそれで許してもらえるのなら……いやでもプリンごときで交代は嫌です。しかし、それしか術がないのなら……それでも……。)

悩み続けるノボリの耳に、ふ、と笑みを含んだ呼気が聞こえた。

「……クダリ?」

「あは、ごめん。うそだよ」

ぽかんとする唇に、クダリの人差し指がそっと触れた。

「ぼく、ノボリがぼくのことで悩んでる顔、好き。だからちょっと意地悪しちゃった」

そう言って猫のように目を細めるクダリ。その顔があまりにも蠱惑的で、ノボリは怒ることも呆れることも出来ずに、ゆっくり息を吐き出した。

「…では、許してくださるのですか?」

「うん。今度同じの買ってきてくれるなら」

「もちろんでございます」

「じゃあ、仲直り」

そう言って重ねられた唇は、あまりにも甘美で。

「これからも、わたくしがあなたを抱いてよろしいのですか?」

「いいよ。ノボリの好きにして」

毒されているとわかっていながらも、手放す気には到底なれないのだった。



END




うちのクダリちゃんは小悪魔寄り。押すときは強いけど、逆に押されると弱いタイプです。
がんばれノボリ(´∀`)


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