文章♯

□朝焼けキャラメリゼ
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※事後



二人分のココアを手に階段を上る。自分の部屋に入ると、出たときと異なる部分があった。

布団が丸まっている。

「N? 起きたの?」

その中にいるであろう人物に声をかけるが、反応はない。
いくつか立てた予想の中にあった反応なので、驚きはしないけれど苦笑は漏れた。
ココアをサイドテーブルに置いて、ベッドの前に膝をつく。

「えーぬ」

布団の肉まんをポンとたたくと(そういえば腹が減ったな)、ピクンと小さく跳ねた。

「顔見せてよ」

「……やだ」

今日初めてのNの声は、ひどく掠れていた。
ああかわいそうだな、と少し思ったけど、それ以上に満たされる感覚があった。

昨日、俺とNは初めて身体を繋げた。

正直いっぱいいっぱいで色々大変だったけど、それでも俺は、Nとひとつになれて嬉しかった。

「怒ってる?」

結構無理をさせてしまったと思う。出来る限り慎重に進めたつもりだったけど、お互い初めてだったからすべてが上手くいったとは言いがたかった。

「ちがう…けど、」

布団が僅かにもぞりと動く。

「…知らなかったんだ。自分があんな風になってしまうなんて、セックスがあんなに羞恥心を掻き立てるものだなんて」

この態度は不満ではなく羞恥の表れらしい。ひとまずは安心だ。

…しかし、昨日の自分の痴態は恥ずかしがるのに、セックスという単語を口に出すのは平気らしい。
そういうところは実に彼らしいと思う。

「N、喉渇いただろ? ココア入れて来たんだ。早く飲まないと冷めちゃうよ」

「入れてきてくれたの…?」

「うん」

Nは猫舌のくせに淹れたてが好きだ。
確かに冷めたらおいしくないけど、彼にとってはそれ以上の意味があるようだ。

案の定、布団肉まんから若草色がひょこりと覗いた。あと一押し。

「それから、Nとキスしたい」

「ふえ、」

「Nはしたくない?」

「……っ」

もぞもぞと動いたかと思うと、Nがおずおずと顔を出した。

「トウヤ…」

「おはよう、N」

見つめてくる潤んだ碧に笑いかけて、唇を塞いだ。

「…おはよう」

照れくさそうに笑うのが、すごくかわいいと思う。

とりあえずシャツだけ羽織らせて、ココアを手渡す。(身体がだるいと着替えは拒否された。)
懸命にふうふうと息を吹きかけている様子は子どもみたいなのに、首筋に残る赤がそれを裏切る。

…あんまり見てるとやばいな。また襲っちゃいそう。

ベッドに並んで座って、俺もカップに口をつける。
甘めに作ったNのココアより砂糖は少ないはずなのに、やけに甘く感じたのは、きっと。



END




甘いのはおまいらの空気だよバカップル!


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