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□あまいあまい毒をください
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※直接描写はありませんが注意
腰を前に進めたとき、肩にぴりりと痛みが走りました。そっと見やれば、銀灰色の頭。わたくしからは見えませんが、きっとそこには歯形が刻まれているのでしょう。
やがて肩から口を離したクダリは、行為の最中とは感じさせないほど無邪気に笑いました。
クダリがこうして噛みつくのは、決して声を抑えるためではないのです。
「あのね、ノボリが好きって思って、ちゅうしたくなるのと同じ。ノボリのこと、かぷってしたくなるんだ」
それを聞いたときには、言葉のあまりのかわいらしさに、それこそ噛みつくように口づけてしまったものでしたが。
噛み癖、と表現すればよろしいのでしょうか。クダリにとっては、噛むことも愛情表現のひとつなのです。
それは何も行為中に限った話ではありません。人前では流石にやりませんが、家で寛いでいるときなどにはしばしば、衝動が湧くようです。
ですからわたくしは、噛みつかれるたびに、甘い歓喜と不安に苛まれるのでございます。
「ねえ、クダリ? わたくし以外の方にも、噛みつきたくなったりするのですか?」
クダリはきょとん、と目を見開いて、うーん、と考え始めました。
そう。その衝動がどこから来ているのか、わたくしは測りかねておりました。
クダリは人懐っこい性質をしておりますから、気に入った相手なら誰でもいい、という可能性も捨てきれないのです。
やがて思考から戻ったクダリが、にこりと笑いました。
「ううん、ノボリだけ。ステーションのみんなも、ポケモンたちも好きだけど、噛みつこうとは思わないよ」
その言葉がどれほど嬉しかったか、きっとクダリにはわからないでしょう。
だって、わたくしの秘めやかな独占欲が叶えられたのですから。喜ばずにはいられないというものです。
「クダリ」
ゆっくり揺さぶると、甘い悲鳴。こちらを見つめる瞳は、愛欲に潤んで蕩けておりました。
「これからも、わたくしだけにしてくださいましね」
「…うん、ノボリだけだよ」
ひとつキスを交わして。
そしてわたくしたちは、共に快楽の波に沈んでゆくのでございました。
END
噛み癖の話パート2。
雰囲気えろを目指して散りました。←
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