文章♯
□ひだまりの猫、二匹。
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「ねえノボリ、…まだ?」
「ん……もう少し、お待ちくださいまし」
もうかれこれ三回は同じ台詞を聞いた。
お昼ご飯を食べたあと、ノボリは本に夢中になっちゃって、せっかくのお休みだっていうのに構ってくれない。
後ろから抱きついて本を覗きこんでみたけど、途中のページじゃ展開がさっぱりわからない。
「ノボリぃ」
「ん…」
とうとう生返事になった。
(つまんないの)
おもしろくないから、ぼく考えた。
要はノボリの意識をぼくに向けられればいいわけで。その方法は――そうだ、あれがいい。
思わず口の端がつり上がっちゃうけど、ノボリには見えてない。ふふ。
そうっと脇腹に手を伸ばして…思いっきりくすぐった。
「ちょっ、クダリ!? やめっ……あははは!!」
ぼく知ってる。ノボリは脇腹が弱い。……まあ、ノボリが弱いとこって大抵ぼくも弱いんだけどね。
「や……っ、〜〜〜!!」
たぶん「やめてくださいまし」って言いたいんだろうけど、言葉になってない。あ、目じりに涙浮かんでる。かわいい。
「……あ、なたは、鬼ですか…」
満足したところで解放すると、床に倒れたノボリがじと目で見上げてきた。
「ノボリが構ってくれないのが悪い」
つんっとそっぽを向くと、呼吸を整えたノボリが身を起こして、まったく…と小さく溜め息を吐いた。
「そんなにわたくしと遊びたかったのですか?」
「うん」
正直に答えると、ノボリの表情が苦笑に変わった。
「しょうがないですね。…ほら、おいで」
なんて両腕を広げられたら、抱きつく以外に何が出来るだろう。
与えられたぬくもりに、ぼくはほうっと息を吐く。
ノボリの腕がそっと背中にまわって。
「ひゃわっ!? あはははは!!」
やられた!
刺激に悶えながらノボリの顔を見ると、優しい微笑は意地の悪いものに変わっていた。
「さっきのお返しです」
「やだぁ…っ、ひ、はははっ!」
考えてみれば、ぼくがノボリの弱点を知っているということは、逆も言えるということで。
「知っていますかクダリ? くすぐったい場所というのは、そのまま感じる場所なんだそうですよ」
じゃあぼくに勝ち目なんかないじゃん。絶対ノボリのほうが詳しいよ。
「も、…ら、めぇっ、〜〜〜っ」
「ふふ、かわいい」
……ようやく放してもらえる頃には、息も絶え絶えで苦しいくらいだった。
ノボリの胸にもたれかかって、呼吸を整える。
「はぁ……ノボリだって、鬼じゃん」
「それは仕方ありませんね。わたくし達は双子なのですから」
しれっとした顔で言うけど、それって関係あるのかな?
「さて、続きは夜にするとして。クダリ、何かしたいことがあるのですか?」
ん。何か不穏な言葉が聞こえたような気がするけど…まあいいや。これでやっとノボリと遊べるんだから。
「あのね、ぼく散歩したい」
「では、久しぶりに5番道路の方まで足を伸ばしましょうか」
「うん!」
せっかくだから、アイアント達も外で出してあげようかな。
身だしなみ整えて、ボールをベルトに付けて、準備オッケー!
「行こう、ノボリ!」
「ええ」
たまにはこんな休日もいいよね。
まあ、ぼくはノボリと一緒なら何だっていいんだけど。
ノボリも、そうだよね?
END
▲「はいそうです」(速答)←
うちの上下はお互いがお互いのことを可愛いと思ってます。
夜もさんざん(性的に)くすぐられたとかそんなオチですよ(^ω^)
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