文章♯

□ひだまりの猫、二匹。
1ページ/1ページ

「ねえノボリ、…まだ?」

「ん……もう少し、お待ちくださいまし」

もうかれこれ三回は同じ台詞を聞いた。
お昼ご飯を食べたあと、ノボリは本に夢中になっちゃって、せっかくのお休みだっていうのに構ってくれない。
後ろから抱きついて本を覗きこんでみたけど、途中のページじゃ展開がさっぱりわからない。

「ノボリぃ」

「ん…」

とうとう生返事になった。

(つまんないの)

おもしろくないから、ぼく考えた。
要はノボリの意識をぼくに向けられればいいわけで。その方法は――そうだ、あれがいい。
思わず口の端がつり上がっちゃうけど、ノボリには見えてない。ふふ。
そうっと脇腹に手を伸ばして…思いっきりくすぐった。

「ちょっ、クダリ!? やめっ……あははは!!」

ぼく知ってる。ノボリは脇腹が弱い。……まあ、ノボリが弱いとこって大抵ぼくも弱いんだけどね。

「や……っ、〜〜〜!!」

たぶん「やめてくださいまし」って言いたいんだろうけど、言葉になってない。あ、目じりに涙浮かんでる。かわいい。

「……あ、なたは、鬼ですか…」

満足したところで解放すると、床に倒れたノボリがじと目で見上げてきた。

「ノボリが構ってくれないのが悪い」

つんっとそっぽを向くと、呼吸を整えたノボリが身を起こして、まったく…と小さく溜め息を吐いた。

「そんなにわたくしと遊びたかったのですか?」

「うん」

正直に答えると、ノボリの表情が苦笑に変わった。

「しょうがないですね。…ほら、おいで」

なんて両腕を広げられたら、抱きつく以外に何が出来るだろう。
与えられたぬくもりに、ぼくはほうっと息を吐く。
ノボリの腕がそっと背中にまわって。

「ひゃわっ!? あはははは!!」

やられた!
刺激に悶えながらノボリの顔を見ると、優しい微笑は意地の悪いものに変わっていた。

「さっきのお返しです」

「やだぁ…っ、ひ、はははっ!」

考えてみれば、ぼくがノボリの弱点を知っているということは、逆も言えるということで。

「知っていますかクダリ? くすぐったい場所というのは、そのまま感じる場所なんだそうですよ」

じゃあぼくに勝ち目なんかないじゃん。絶対ノボリのほうが詳しいよ。

「も、…ら、めぇっ、〜〜〜っ」

「ふふ、かわいい」

……ようやく放してもらえる頃には、息も絶え絶えで苦しいくらいだった。
ノボリの胸にもたれかかって、呼吸を整える。

「はぁ……ノボリだって、鬼じゃん」

「それは仕方ありませんね。わたくし達は双子なのですから」

しれっとした顔で言うけど、それって関係あるのかな?

「さて、続きは夜にするとして。クダリ、何かしたいことがあるのですか?」

ん。何か不穏な言葉が聞こえたような気がするけど…まあいいや。これでやっとノボリと遊べるんだから。

「あのね、ぼく散歩したい」

「では、久しぶりに5番道路の方まで足を伸ばしましょうか」

「うん!」

せっかくだから、アイアント達も外で出してあげようかな。
身だしなみ整えて、ボールをベルトに付けて、準備オッケー!

「行こう、ノボリ!」

「ええ」

たまにはこんな休日もいいよね。
まあ、ぼくはノボリと一緒なら何だっていいんだけど。
ノボリも、そうだよね?



END




▲「はいそうです」(速答)←

うちの上下はお互いがお互いのことを可愛いと思ってます。
夜もさんざん(性的に)くすぐられたとかそんなオチですよ(^ω^)


Black

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ