文章♯

□リトルワールド
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※パラレル
※実験体ルーク×研究者ジェイド、…っていうとあんまり変わらないようだけど、アビスの世界観は総無視の方向で。
※ちょっと読みにくいかも。










おれがうまれたとき。(このせかいで目をさましたとき、というべきかもしれないけど。)
きれいな紅玉のひとみが一対、うすいレンズ越しにおれをのぞきこんでいた。安堵したような、それでいてかなしそうなまなざしが印象的だったから、よくおぼえている。

それが、おれという存在をつくりだした研究者、ジェイドとのはじめての対面だった。




おれにはジェイドから『ルーク』という名前と、生活する場所をあたえられた。
正直いうと、白衣のおとこたちに“ひけんたい”とか“にごう”とかよばれて檻のなかで日々をすごす、そんな状態に辟易していたから、そこからぬけだすことができて心底ほっとしていた。

さいしょはそんな程度の認識だったけれど、おれはすぐにジェイドのことがすきになった。
かれのそばは居心地がよかった。“ひけんたい”としてではなく、ひとつのいのちとして接してくれるのがうれしかった。
そうして自然に、おれの居場所はジェイドのそば、になった。


うまれながらに最低限のちしきをもっていた(そうやってつくりましたから、とジェイドはいっていた)おれだけれど、わからないことはたくさんあった。たとえば研究所[ここ]でのルールだとか感情だとか、そういう生きていくなかでおぼえていくものは備わっていなかった。
それをジェイドはひとつづつ丁寧におしえてくれたけれど、おれだけがもってるこの『ちから』の使い道は、まだわからないままだ。

──けものの身体能力と、物体をねじまげてしまう特殊能力。

ひとであってひとでない。そんなおれのことを、一部のおとなたちが陰で『ばけもの』といっていることは知っている。
そういわれても、べつに気にならない。だってふつうの人間から見たら、けものの耳と尻尾がついていて、ひとならざる『ちから』をもったおれは、やっぱりばけもののような存在なんだろうとおもうから。

でも、おれをつくってくれたジェイドまで『ばけもの』といわれるのはゆるせなかった。
ジェイドは『ばけもの』なんかじゃない!やさしくてあったかい人間なんだ!
そうしておれが部屋のなかでじたばたしていると、きまってジェイドがやってきて、やさしく抱きしめてくれる。そして耳元で「大丈夫ですよ」とささやくのだ。

──大丈夫じゃない、ぜんぜん大丈夫じゃないよ、ジェイド。
それでもおれにはどうしようもなくて、ジェイドをこまらせるのもいやだから、おれはジェイドの腕のなかでおとなしくなるしかないのだ。

「いい子ですね」

ふわりとわらう。どこかさみしげなその笑顔。
ねえ、ジェイドはどうしてそんなにかなしい顔でわらうの。おれをつくったことを後悔している、の?

問いかけはいつも声にだせず、むねの奥にしずんだまま。



──…



今なら解るよ。
俺は生物兵器として生み出された実験体なんだ。だから研究者達は俺をヒトとして見ない。
でもジェイド、あなたは違うんだね。
それが俺を、生物兵器を作ったことに対する後悔から来る感情だとしても、あなたが俺の特別だということは変わらない。

だから俺は──この力をジェイドのためだけに使うよ。

「ルークッ!!」

ジェイドの悲鳴みたいな声が聞こえる。こんなときでさえ、ジェイドの声は真っ先に届くんだ。

なあ、ジェイド。聞いてほしいことがあるんだ。

『俺は、あなたが好きだよ。』




…そうして物語は紡がれる―






‥‥‥‥‥‥‥‥


本当は長編になるはずだったんですが、なんか続かなくなっちゃったんでここまでであぷ。
だから無駄に裏設定とかあるんです(笑)

このあと戦争が始まって(というか成長したルークが語ってる部分はもう始まってる設定なのですが)どーたらこーたらでルークが創られた経緯とかジェイドの過去とかを暴きつつ2人は結ばれる…みたいな筋書き。

けもみみが生かせなくて非常に残念である(笑)


Blue

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