文章♯
□Expression of his love
1ページ/1ページ
ひたいに。
まぶたに。
ほおに。
そしてくちびるに。
ひとつひとつ、愛しさをこめて口づける。
それは誓いの儀にも似ていた。
Expression of his love
最近のルークはやたらとジェイドにキスをしたがる。
さすがに皆の前ではしないが(譜術の餌食になることを予測して、だ)、宿屋の部屋の中に入ると、たががはずれたようにジェイドに口づけを落とす。
今だって、部屋に入るなりしがみつくようにしてベッドに押し倒し、キスの雨を顔中に降らせている。
そっと唇を重ねたあと、もう一度、今度は深く重ね合わせる。
「ふっ…んぅッ」
ピチャ、クチュと水音が部屋に響く。
それは羞恥と共に興奮を煽った。
舌を甘噛みしてから唇を離すと、二人を銀の糸が繋いだ。
「はぁっ…はっ…」
ジェイドを見やると、彼は肩で息をしていた。淡く染まった頬に、潤んだ赤い瞳が扇情的で、ルークは思わずごくりと喉を鳴らした。
するとジェイドがくすりと笑った。
「欲情、したのですか?」
「ぅ、わ、悪かったな」
ジェイドが色っぽすぎるのがいけないんだ。
そう拗ねたように言えば、よしよし、と頭を撫でられた。
「子供扱いすんなッ」
まったく、組み敷いているのはこちらだというのに、この男は何故こんなにも余裕なのか。
年の差を見せつけられているようで、何だか悔しくなった。
ジェイドの軍服の前をはだけて、露になった白い首筋に口づけ、そのまま強く吸い上げる。
「んぅッ…!」
白磁の肌についた所有印に満足して、ルークはそこをぺろりと舐めた。
「ルークっ…」
「ついたよ。俺のだっていう印」
綺麗、花びらみたいだ、と言うと、ジェイドの顔に朱が走った。
「あ、照れてる」
「…うるさいですよ」
その言葉と共に頭を引き寄せられ、今度はジェイドからのキス。
唇が離れると、ルークはにっこりと笑ってジェイドの髪を梳いた。
愛しくて。
愛しくて仕方なくて。
誰にも、渡したくなんかない。
「ジェイド…」
梳いていた髪を一房手に取って、それにもキスを落とす。
「好き……好きだよ。ジェイドが、すごく好き」
本当は、もっとたくさん伝えたい想いがある。
それなのに、出てくるのは稚拙な言葉ばかりで。
ひどく、もどかしい。
「…なぁ、ジェイド。俺の気持ち、ジェイドにちゃんと伝えられてるかな?こんな言い方しか出来ないから、伝わらないんじゃないかって、不安なんだよ…」
格好悪いよな、俺。
すると、ジェイドの手が、ルークの頭をぽんぽんと撫でた。
「馬鹿ですねぇ」
「なっ!?」
ルークは心外だと顔をあげた。
きっと、ジェイドは意地の悪い笑みを浮かべているのだろうと。
しかし、予想に反して、目の前のジェイドの顔は、綺麗に微笑んでいて。
面食らってしまった。
「伝わっていますよ。そんな言い方、でいいんです。だってそれが貴方の一番正直な気持ちなのでしょう?」
「う、うん」
ジェイドが柔らかな笑みを浮かべていることなんて滅多にない。
あまりの美しさに、呆けたように見とれてしまった。
「だいたい、言葉で伝えられることなんて、一部分でしかないんです」
だから、言葉にできなくてもいいんですよ。
その言葉に、ルークは情けないくらいに破顔した。
「…ありがと、ジェイド」
「いいえ。あまりうじうじされていると、こちらが困りますからねぇ」
「……ぅ、悪かったな」
こういうとき、やはり彼は大人で、自分は子供なのだと思い知る。
だけど、それは何故か不快ではなくて。
「ジェイド…大好き」
背中にまわされた腕が、たまらなく愛しく感じた。
END
----------------
恐れ多くもジェイド受けMMアンソロに投稿した話でした。
Blue