文章♯
□六月の花嫁
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※注意!
・脱力系ギャグです。(むしろコメディ)
・ロイドがおかしい。
・一応恋人同士。
以上を踏まえて、どうぞ。
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「クラトス、結婚しよう」
息子の放った言葉を理解するのに、きっかり三十秒かかってしまった。
私の理解力が至らないわけではない、と信じたい。いや、理解できてたまるか。
そもそも、だ。
ロイドがいくらバ……いやいや、少々頭が弱いにしても、男同士で結婚できないことは知っていると思っていたのだが。
「ロ、ロイド?知っていると思うが、私は男だぞ?」
するとロイドは、けろりとした顔で知ってるよ、と言い、
「だって風呂にも一緒に入ったしな」
とのたまう。
そう、それ自体はそんなに珍しいことではない。
ただ、時折風呂場で求められるのは…少々、いや大分困るのだが。
その時のことを思い出して、私が一人赤くなっていると、どうかしたか?と張本人が覗き込んでくる。
その顔を半ば無理矢理横向かせて、話を本題に戻す。
「では何故、結婚しよう、などと?」
その言葉に、彼はきょとんとして言う。
「何故って…知らないのか?ジューンブライド」
コレットが教えてくれたんだ。六月に結婚した花嫁は幸せになれる、って!
顔を正面に戻したロイドは、にっこりと笑って報告する。
…それはもちろん知っている、が。
「…花嫁?」
言った途端、思いっきりこちらを指差された。
こらロイド、人を指差してはいけないとダイク殿に習わなかったのか…って、そんなことを言っている場合ではない。
「どちらかと言えば、お前が花嫁のほうがいいと思うのだが…」
というか結婚自体、普通に考えて出来ない。
それでも息子はこう言うのだ。
「何言ってるんだよ!クラトスがウェディングドレス着たほうが絶対綺麗だって!」
綺麗だとか綺麗でないとか、そういう問題では無いと思う。
というか、着せる気だったのか、息子よ。
「それに、いつもクラトスが下だろ?だから花嫁もクラトスがなるべきなんじゃないかと思ったんだ」
…すると何か。
この馬鹿息子は、あろうことか父親を女扱いしていると、そういうことなのか?
ごん。
思わずその頭に一発くれてしまった。軽くやったつもりなのだが、思いのほか威力があったらしく、ロイドが頭を押さえて呻いた。
「いってぇー…何すんだよー」
「…お前が馬鹿なことを言うからだ」
これでも結構本気だったんだけどな、と言うロイドに嫌な顔をしてみせると、彼は頭の後ろを掻きながら弁解を始めた。
「だって、クラトスのこと、幸せにしてやりたかったんだ」
「……は?」
思わずぽかんとしてしまう。
私を、幸せに?
「男同士で結婚できないってことくらい知ってるけどさ、他に方法思いつかなくて」
あ、クラトスのことを女みたいに思ってるとか、そういうのじゃないからな!と、息子は慌てて補足する。
…くそ、これでは叱れないではないか。こんなにも、私を想ってくれていたとは。
「馬鹿息子め」
そして、その馬鹿息子にやられてしまっている私も、立派に馬鹿親なのだ。
何とも言えない顔をしているロイドの額に唇を落として、指輪の交換くらいなら、と許してやった。
しかし私が花嫁になるのは……勘弁してほしい。
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