文章Φ
□これ以上ほだされたら心臓が破裂します
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思えば、恋情をあらわにするのはいつも黄瀬君のほうからで、ボクはそれに応えることでコミュニケーションが成り立っていた。
だから、こちらから引き寄せたときに彼の瞳に浮かんだ驚きと期待の色は、ある意味当然だったのだろう。
「ぁ、黒子っち…?」
唇の合間から漏れたボクを呼ぶ声は、とても甘く響いた。
彼の頬を撫でながら「なんですか」と囁けば、長い睫毛が少しだけ伏せられた。
「なんか、いつもと違くない?」
疑問をたたえたその瞳は、それでも思慕に潤んでいた。
「そうですか?」
「そうっスよ。だって…」
その先の言葉を許さず、また唇を塞いだ。
続くはずだった声は鼻にかかった吐息になりかわって、空気を甘くとろけさせる。
無理やりこじあけることはせず、舌で優しく唇を撫でる。
薄く開いたら許可の合図。
ゆるやかに侵入を開始する。
「ふ、」
奥でふるえる舌を絡めとって、吸い付く。
くちゅり、と鳴った音が羞恥を煽ったのか、閉じられた目元に赤みが差した。
頬に添えていた手を後頭部に回して、口づけはより深く。
歯列をなぞって、上顎をくすぐる、そのたびに黄瀬君が小さくあえぐ。
彼がこれに弱いのはとっくに承知済みだ。
ボクの腕を掴む手に力がこもるけど、それは拒絶じゃないことも。
「んう、っ」
さんざん貪って開放すれば、くたりとしなだれかかってくる身体。
お互いの乱れた呼吸だけが聞こえる。
「…黄瀬君」
どうして受け取るだけで満足出来ていたのだろう。
ボクの胸の中には、こんなにも想いが溢れていたのに。
しばらくして、首もとの黄色い髪を撫でると、黄瀬君がゆっくり顔をあげた。
端正な顔がふにゃりと笑み崩れて。
「黒子っち、オレ、なんかもう…とけちゃいそう」
だなんて。そんな顔で言われたら困ってしまう。
甘い息苦しさを抱えたまま、腕の中に黄瀬君を閉じこめて。
みたび唇を寄せるのに、時間はかからなかった。
END
雰囲気しっとりのイチャ甘を目指しました。
うちの黒黄は相思相愛すぎてなんか恐いわ…(笑)
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