Swёеt
□夕焼け
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「階段キツい…」
やっぱり、少し体力つけたほうが良いのかな…
ようやく屋上のドアにたどり着いた自分は、ノブを回す。
ガチャッ
「‥‥わぁ。」
ほの暗い校舎から出て見た景色に、自分は溜め息を漏らす。
それは、この場所だけを別世界に感じたから。
プールの水に夕日が反射して、鮮やかな光がキラキラと光っている。
まるで、この空を閉じ込めたような…そんな世界。
そこに居たのは
「あ、ハルヒ!」
子供のような無邪気な笑顔をした環先輩だった。
でもいつもの金色の髪は、背景の夕日の光が反射して、綺麗な橙色に染まっている。
そんな誰よりも輝いて見えた環先輩に、思わずときめいた。
「環先輩…。」
「よかった〜!気づいてくれるか不安だったんだ。」
環先輩は、よく子供たちがもっているような、安価の小さなシャボン玉の容器を持っていた。
自分は、フェンスの近くに座っている環先輩の隣に座る。
「まぁ…気づいたのは、何となくですかね。」
「何となくでも、俺に気づいてくれたのは嬉しいな。」
たったそれだけで、環先輩は簡単に笑顔になる。
この愛しい笑顔を作った原因が自分なのだと思うと、気分が心地よくなる。
「でも、何でシャボン玉の溶液なんて持っているんですか?」
「うむ。この間、ハルヒの家の近所に住んでいる女の子が、木に引っかかった風船が取れないと言ってきてな。取ってあげたら、コレを貰ったんだ。」
「そんなことがあったんですか‥‥でも、何で屋上に?」
「双子に知られれば、恐らく全て使われてしまうのがオチだと思って、先に屋上に来たんだ。」
そう環先輩は言って、またシャボン玉を作る。
‥‥確かに。
あの二人が知ったら、絶対にわざと使い切るだろうな。
「確かに、それが一番良かったと思います。」
「だろう?」
そう言って、自分たちは笑いあった。
「なぁ、ハルヒ。」
「何ですか?」
「もっとこっちきて。」
そんなことを唐突に言う環先輩に、少しだけドキッとする。
だけど自分は、元々距離などないくらい近くに座っている。
「もっとって…これ以上近くに?」
「もっと!」
「えっ。」
いきなり環先輩に抱き寄せられて、何かと思ったら
「ほら。これ以上近い所はないだろ?」
気づくと、環先輩の足の間に座らされていた。
そうして、後ろからぎゅっと抱きしめてくる。
何だか…意外といいかも。
後ろからしっかりと抱き締められて環先輩の体温を感じるから、その包容にとても安心する。
けれど、環先輩の顎が自分の左肩に乗って、頬と頬がぴったりとくっついている状況には、ドキドキして落ち着かない。
でも、幸せな状況には違いなくて…
「環先輩、なんだか子供みたい。」
この心臓の音を誤魔化すために、少し笑ってみる。
「ハルヒの前だけだもん。」
「部員の皆にも…でしょう?」
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