100題2

□暖かな手を冷たくする方法
1ページ/1ページ



彼女の手はいつも、とてつもなく冷たい。

夏なら重宝ものだが、真冬にそんな手をしているものだから、いつも手を繋いでいる俺の手は彼女に熱を奪われ冷たくなる。
その上、熱を俺から奪っている筈の彼女の手もまったく温かくならないし、正直良いことなんて一つもない。
だから俺は、彼女に自動販売機の温かい飲み物をかってあげる様になったのだ。
だってそれなら俺の手は冷たくならないし、彼女の手だって、きっと俺と手を繋いでいる時よりは温かいだろうと思ってだった。
しかし何でだろうか、何故だか俺の胸は冷たい北風が通る様に冷える。コートもちゃんと着てるのにな、何故かな。

今だって大事そうに温かいスチール缶を両手で持つ彼女の両手に反して、俺の手は手持ちぶさたにだらしなく垂れ下がっているし、幸せそうにココアを見ている彼女に反して、俺はつまらなそうに彼女の横目で見ている。
何だかソレが無償に上手くない気がして、何で、彼女ばっかり特をしているのだろうと、ちょっと本気で思った。




暖かな手を冷たくする方法





(あのさ、そろそろ俺の財布の中が寂しくなったから、節約の為に明日からまた手、繋ごっか。)
(……素直じゃないね、虎次郎。)
(何の事かな?)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ