100題2
□息苦しいほどに愛している
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一ヶ月前、彼女は宇宙飛行士になりたいのだと言った。
でもなれないのだと。
なんでと聞いたらあまりに悲しそうな顔で笑ったから、俺はそれから何故かと聞くことはおろか、その話題に触れることもしなくなった。
彼女は病気を患っていて、それが彼女の足枷だった。
空に飛び立ちたかった彼女は、屋上から飛び降りて、重力に引かれた時何を思ったんだろう。
俺は何で彼女から逃げたんだろう。
彼女はあんなにも苦しんでいたのに。
あぁ、
もう考えるのを止めよう。
眠ろう。
子守唄代わりの彼女の声はないけれど、最後に見た彼女の笑顔は瞼の裏に映る。
あぁ…
眠くなってきた。
今日も空がきれいだ。
息苦しい程愛している
(そう。彼女は愛していたんだ、あの、蒼い空を…)