100題2

□息苦しいほどに愛している
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目を覚ますと、俺の頭の下には、彼女の代わりに彼女のセーターが置いてあって、彼女は屋上のフェンスの向こう側にいた。
その様子が、寝ぼけた頭でも異常だと感じることが出来て、みるみる頭は冴えていく。
「どうしたの?」
「あ、じろー起きたんだ。」
そうして思わず声をかけたら、彼女は俺を見て優しそうに、屈託無く笑った。いつものように。
でも、そのいつもと同じ笑顔が異常さに拍車をかけるようで、俺は何だか無性に泣きたくなる。
何でだろう。
なんで大好きな笑顔がこんなに変に胸を抉るんだろう。
もしかしたら、彼女が背にしている夕日があまりに眩しいからかな。
「じろー、もう部活の時間じゃない?早く行かないとまた怒られちゃうよ。」
彼女は俺の不安なんて他所に、いつもと変わらず俺に声をかける。
俺はきっと、考えている事が分かり易いくらい顔に出ていると思うのに、彼女はその事には触れない。

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?

疑問が幾つも胸に巣食う。
でも俺は彼女の中に踏み込む言葉を持ってはいなかった。


だから俺は逃げたんだ。


「じゃあ俺部活行くCー。」
「うん。いってらっしゃい。」


屋上のドアを閉めた途端、振り切る様に走り出す。









何を振り切りたかった?
嫌な予感?
彼女の笑顔?
現実の非情さ?







違う







俺は、俺の弱さから、情けなさから逃げたかった。

でも、弱さも情けなさも走る度俺の足に絡みつく様で、怖くて、息も直ぐあがって、部活にも出ずに真っ直ぐ家に逃げ込んで、

そして眠りについた。











明日が来ないように祈りながら。

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