100題

□黒い気持ちを赤くして
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※季楽の性格&喋り方壊れ気味








「好きだ。」
そんな事を言われると思ったことなんてなかった。
「ずっと。好きだったんだ。」
何でそんな事を言われているのか意味を頭が理解できない。
「こんな事言われて困るよな。」
聞きたくなかった。友達だった人間にそんな事、言われたくなかった。
「ごめん。でも、もう無理だったんだ。」
無理ってなんだよ。その気持ちを強制的に聞かされたコッチの事はまるで思わないんだね。
好きの癖に。
最悪だ最悪だ最悪だ。

僕はその場を逃げ出した。耳を塞いで、何も聞こえないと主張するように。





「季楽、今日ストテニ行かないの?」
「気分悪い。」
昨日の事が有ってから僕は部屋にこもっていた。
そしたら何時の間に寝ていたのか、目を覚ました時には朝日はもう随分と高い所にあって、家が近くの高瀬が僕の部屋まで迎えに来ていたけれど、僕はその誘いを断った。
今あの場所でテニスなんてしたら昨日の事をまざまざと思い出して涙を流してしまうかもしれないから、あと本当に気分は悪かった。
高瀬はその言葉を聞くと、じゃあ皆に伝えとく。と言って、僕の部屋から出て行った。

僕はその姿を見送ると、蒲団を頭まで被る。
カーテンの隙間から零れる朝日が眩しくて、瞼を閉じただけでは眠れそうに無かったからだ。




眠っている間、室町と初めてあった日を夢に見た。
人は忘れそうになっている事を思い出すこともあると聞いた事が有るからその類だと僕はぼんやりと思う。
室町と初めて会ったのは、関東大会で青学に負けた後、前よりも練習に励みだした後だ。
パパ達は確かに前よりは練習メニューを増やして、練習時間を増やしてくれたけど、体を壊さないようにとやっぱり練習にセーブをかけていた。
しかし、そんなセーブのかけられた練習が物足りなかった僕たちは、内緒でどこかのストリートテニス場で練習をしようという事になって、そして源が見つけた穴場のストリートテニス場に居たのが、室町だった。
室町も僕たちと同じ様な理由でそのストリートテニス場に居た事と、同い年だったという事もあり、僕たちと直ぐに打ち解けた。
室町は、他校、テニス部以外で初めて出来た友達だったのだ。
でも、室町はそうとは思ってなかった。それが、何より悲しかった。
友達の裏切りの様な気がしたのだ。

向こうは、友達とも思っていなかったのだけれど。



目が覚めたとき、蒲団を頭まで被りながら涙を流していた。
涙を流しながら目が覚めたことなんて今まで体験した事が無かったから、涙を流している事に驚いて、呆然としながら蒲団から出た後涙が流れた後を指先で辿る。
自嘲的な笑いが込み上げる。
向こうは友達とも思って無いのに、まだ未練たらしく思ってる自分に虚しくなる。
どうしようもない気持ちがもやもやと胸の中に留まっている。
何て格好悪いのだろう。
「(……ああ、最悪。)」
ベッドに座って膝を抱えて、さっきの涙の後を辿るように涙を僕は流した。
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