100題

□懐かしの出会いはそれほど感動的なものではない
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年下に負けた。
二回も年下に負けた。
自分の油断と言うものもあるけど、実力であっても負けていた気がする。多分油断は言い訳に入るんだと思う。
だからつまり、俺は二回も年下に実力で負けたのだ。
それがどれほどの屈辱か分かるだろうか。
でもいい、そんなの自分が弱かっただけの話で、この先強くなれば。
何が嫌だって、団体戦だと言う事が嫌だ。
他の人たちを背負う責任を持たなくてはならない。
だって俺は山吹中のエースだから。そんな期待普通部長の南が請け負うものだろうと思うけど、南はダブルス名門と言うもっと重いものを東方と一緒に背負っているから、部長と言う責任は一人で背負っているから、それに比べたら俺の荷物は軽いだろうから、俺は何もいえない。
東方だって、みんなみんなレギュラーと言う思い責任を背負っているのに俺だけその事に嘆きを言っては、さすがにメンツが立たないのでどういっても言えない。
でも、辛いものは辛くて、その責任の重大さを実感するたびに俺はもう嫌だとその責任を振り解きたくなる。
個人戦に逃げ込みたくなる。
でも伴爺はそんな事お見通しだから決して許してくれないし、いや、別にいつでも逃げていいですよ。と解放しているから逆に行きたくなくなるんだ。
ああ、悲惨。

そんな訳で団体戦から逃れる(逃げ出す)事の出来ない俺は練習から取りあえず逃れてみて女の子をナンパする為に大通りをぶらぶらと白ラン姿で歩いていた。
しかし只今後悔中。
すれ違う人たちみんな俺の事嘲笑ってるみたい。耳に障る。うざい。
これは女の子ナンパしてる場合じゃないなと俺は緩やかなだらだら歩きを早足に変えて、近くの公園だか緑地だかに避難しようと目論んだ。
だがしかし、こんな時にトラブルって発生するんだよね。
肩が盛大に反対方向歩いている人とぶつかった。
うわ、集り屋だったらどうしよー。とふざけた杞憂を頭に浮かべ、俺はぶつかった人にへらりと笑みを見せてすいませんしたー。と謝った。
その時ぶつかったのが女の子だったらと考えると今でもぞっとする。嫌われちゃうよ。
まあぶつかった相手は男だったから結果オーライだけどね。
ぶつかった相手はどこぞの俺様泣き黒子野郎跡部景吾クンだった。
「……千石?」
「あれー?跡部クンおひさー。去年のJr.選抜以来だっけ?」
とりあえず挨拶くらいはしておかないと何か文句言われそうに感じた俺が、早口にそんな簡単な挨拶をすると、跡部クンはああ。とだけ答えた。
俺はこの喧噪の中に一秒でも早く脱出したかったので、その後会話を続けようとも思わずじゃあね。と何の脈絡もなく手を振って避難場所にさっさと逃げ出そうと足を前に出した。
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