100題

□懐かしの出会いはそれほど感動的なものではない
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「で、何で君までいるの?」
公園に辿り着き、ベンチで一息ついて、そして今まで突っ込んでいなかった、黙って後ろを付いて来ていた跡部クンに俺は漸く声をかける。
何なんだこの人は。人が気分悪い時に。
そう思いながらもそんな事顔に出さずに俺は黙って隣に座っている跡部クンに俺は懸命に話しかける。う〜ん俺って偉い。
「…………負けたんだってな、この前の試合。」
長い沈黙タイムが漸く終ったのか口を開いた跡部クンは只今俺の最大ブラックワードを言い放った。
はあ?なにこの超失礼な人。
いや、今まで俺様だ俺様だとは思ってたけど、俺様は人の気持ちとかその場の空気とか読む事知らないんですか?
そうだよね俺様だもんね〜あはははっはは。
「跡部クンは青学に負けたよね〜。」
しかしながら俺様だけが空気を読まなくてもいいなんて俺様に優しい社会などでは決して無いので、跡部クンの中で俺が最大にブラックワードだと思う発言を俺は跡部クンにくれてやった。
「あ゛あ?」
まあ諸ずばり的中だったらしくて一瞬にして跡部クンは怒りを露にした。
うっわこの人何週間前の事まだ引きずってるんだよとか、怒りの沸点低すぎだよとか、色々思ったけれど、今そんな考えは全く持って必要していなくて、俺はすぐさま次の嫌味を考え出した。
が、跡部クンは怒っても何か言ってくる事は無かった。俺の傷をえぐるような、傷口に五寸釘を打ち込むような事はしてこなかった。
あの俺様野郎が何も言ってこない。何か変なものを食べたのか、はたまた直らない病気に掛かったのかと至極真面目に考える。そしたら途轍もなく悪い事をしたな、寿命があと少しの人間の言葉に簡単に逆上してブラックワードを言ってしまうとは。
「………あ、あの、跡部クン……ごめん、何か悪い事言って、俺、何も知らなくて……。」
跡部クンは突然謝った俺を不思議そうに見て、何を変に納得したのか、まあ許してやらねえこともねえよ。と偉そうに言い放つ。
その行為に相当いらっときたけれど、この偉そうな表情とももう直ぐお別れだと思うと愛しく思うことは一ミクロンもなかったけど、やれやれ仕方ない我慢してやるか程度には思えた。
「で、話は戻るけど、何で跡部クンは俺についてきたの?」
そもそもこの緑地に来たのは人ごみが鬱陶しくて一人になりたかったからなのに、勝手にこの俺様野朗がついてきたから折角来た緑地でも不快な思いをしているんだ。
「お前に用があったんだよ。だから山吹行ったらてめえはいねえし、会えば会ったでこの俺様を適当にあしらおうとしやがったから嫌がらせした。」
は?つまりやっぱりあの一言は嫌味かこのやろう。嫌がらせか、良い度胸してるねー君。さっきまでの俺の一ミクロン程度の同情心返せやこの野朗。
俺が跡部クンの一言に完全に頭に来ていざ文句を言ってやろうと言う時に、俺は複数人に名前を呼ばれた。
「え?」
振り向けばソコには南、東方、室町クンに壇クンと、そのほかテニス部の草々たるメンバーが居た。
「何で?」
ココに居る事分かったのと思って跡部クンの言葉を思いだす。
そういえばコイツは一度山吹に行ったって行っていたし、そもそもココに居るの知ってるのこの人しかいないし、考えるだけ無駄か。
「でも、何で皆来たの?」
それが不思議でならない。みんな練習如何したの?何でそんな汗だくなんだよ。
「あいつ等、全員てめえの事探してたんだよ。不動峰に負けてからお前の様子が変だってな。おかげで俺まで巻き込まれた。」
は?何それ、皆何考えてるんだよ、試合つぶしたの俺なのに、馬鹿だなあ。
皆も俺も馬鹿だ。
……でもそうだよね、俺ら仲間だったね。
「跡部クン。手塚クンに勝ててよかったね。」
「は、馬鹿じゃねえの?あの試合は俺様の勝利が始めから決まってたんだぜ?勝って当然だ。」
「チームで負けたけど?」
「殺すぞ。」
「めんごー。」
それと
「ありがとうね。」
「ハ、バーカ。」




懐かしの出会いはそれほど感動的なものではない
(とてもとても平凡に)
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