100題

□初めての憎しみ
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始めから嫌いだった。
いっつも何か意味わからなく笑ってるし、女の子をナンパしてるし、俺の!いや、俺のじゃなくて、あーえー……そう!杏ちゃんにまで声を軽々しく掛けてきたし!そう言うとこがまず気に入らなかった。
その上に、負けてもへらへらへらへら笑い続けて試合を終えたところで心底嫌いになった。




俺は、直ぐ人を嫌いになる。
それじゃあ嫌な聞こえかも知れないけど、正直直ぐ人を嫌いになる。
それはまあ試合に負けて悔しかったりだとか、喧嘩するからってだけで、超って位に嫌いなる訳じゃない。
でも今回のはそう言う今までの嫌いとは違うものだと俺は思った。嫌いにならない要素が無いんだ。
あの人の全てが癪に障るし、全てに苛立つ。
そう。コレは憎しみだ。
「また山吹の人でも考えてんの?」
少し籠った声で隣から声が聞こえた。
深司がスポーツ雑誌から目を離さずに話しかけてきたんだと一秒で気がつく。
「質問に答えなよ。」
それでもその間は深司には長い間と同じだからか気だるそうに少し苛立ったみたいに雑誌から目を離して俺を見た。
「そーだよ。」
俺は特に隠す意味も無いから椅子に寄りかかって船漕ぎをしながら答える。
深司は自分の質問が返ってきたからもうその事には用が無いのかふーん。と言いながらまた雑誌に目を戻した。
「アキラは何であの人の事が嫌いなんだっけ。」
深司の唐突な話題に俺は少し驚いて深司を見る。
深司は雑誌から目は離さないで早く話しなよ。と言って俺を急かす。深司の意図なんて俺には全く分かんなかったけど、でもさっきと同じでやっぱり俺には隠す意味何てなかったし、俺は千石さんを嫌いな理由を言った。
「試合に負けたのに笑ってたトコだよ。」
杏ちゃんの事もあるけど、こんなトコで言って誰かに聞かれても困るから伏せる。だからもう一つの理由を命一杯力を込めて言えば、深司はふーん。とだけ答えた。

「でもさ、あの人ちゃんと悲しそうだったよ。」

「嘘だ。あの人は笑ってた。」

「アキラ、あの人の事試合終わった後一回も見て無いからでしょ。」

「………。」
事実に俺は言葉を失う。

「あの人はちゃんと負けを認めて、だから笑ってたけど、悲しそうな顔はしてたよ。」

「…………。」

「アキラはさ、自分の力を認めて貰えなかったみたいな気がしたんでしょ、あの人の笑ってる顔見て。」

「………。」
確かに、俺は精一杯やって勝利をもぎ取って、ホントに嬉しかったのに、あの人は、負けた後も余裕そうな顔をしてて、気に入らないと思った。

「別に人を嫌いになるなとか言わないけど、今回のはあまりに理不尽だと思うけど、あんまり考えガキ過ぎると困るの自分だよ。」

「………うるせー。」



初めての憎しみ
(あの人が女の子に声かけてる間は嫌ってていいんだ。)

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