100題

□憎らしい笑顔
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私は笑う。
その理由は勝手に脊髄反射で口が笑ってしまうからなのだけど、笑うたびにお前は不真面目だとか、辛い事が無いんだね。と言われて、もう私はどうしたら良いのか分からなくなってやっぱり笑った。
それでも笑うのには結構疲れます。
笑った後頬が引きつるし、笑うだけじゃなくて声も明るくしなくちゃいけないのでやっぱり疲れる。
友達はそんな私を見てホントによく笑うねって言うから、私の嘘笑顔はきっとすばらしく出来がいいのだろう。
すごいね、きっと女優になれる。
嘘笑顔が上手いのが女優って安易かな?
まあいいや。そんなの今私の日常に全く関係ないもんね。
そういえば今は女の子と一方的に話を聞かされると言う会話をしているんだった。
私は気の抜けた相槌を打ちながら脊髄反射でにこにこ笑う。
ああ。うん。そうだね。
私の、辞書や常識にはこんなの会話って言わないけど目の前に居る彼女がそれでいいなら別にいいや。
にこにこ。



そんなある日に全く顔も何も知らない人に言われたくも無い言葉を言われた。
「お前の笑顔マジムカつくわ。」
突然そんな事を真正面で言う貴方に私はムカつきますよ。
でもそんな負の感情を思っても私は脊髄反射で笑う。にこにこ。
「それやそれ、その笑顔めっさムカつく。」
にこにこ。顔が勝手に笑って口が固まって喋れないな、その間も目の前に居る人はマジムカつくと繰り返している。
「こら!ユウくんアカンでしょ!女の子にそないな事言ったら!」
目の前の人をはげの人が叩いた。私はそれを見て笑っている。にこにこ。
こんなに目の前の人に対して苛立っているのに私は笑っているなんて不思議だ。私の笑顔は私が壊れるまで続くのだろうか?
にこにこ。
はげの人が楽しそうに笑っている。
ムカつくって言った人もその人と一緒に笑って、その笑顔は私の脊髄反射の笑顔と比べたらべらぼうに輝いて見える。
ああ、いいなあ。
そんな私を見てムカつくって言った人が私を見て、
さっきの声とは違う、多分きっと私の声で。
「笑えばええやん。」
お前も。
その声はさっきと同じ。
そしてわらった。いたづらをした子供のように。
出来るならもうしてますよ。
泣きたくなった。私には出来ない色んな表情を出来る彼を見て。
でも私は笑う。にこにこ。
はげの人がバンダナの人に何変な事いっとるん?と言っていた。
そんなはげの人に曖昧に返事をする彼と目が合う。
そして彼は私を見て少し曇った顔をして、そして目深に被っているバンダナにその瞳を隠して教室からでていった。
私は笑う。
「(ごめんなあ。)」
泣きながら。
笑って、顔を伏せて、泣いた。



憎らしい笑顔
(何で出来ひんのやろ。)


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外に聞こえてる声と自分に聞こえてる自分の声って違いますよね。




 

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