100題

□沈むテンション
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今日名も知らない女子に告白された。
他者受け、得に異性に受けやすい顔をしている俺はそんな事しょっちゅうされているので、いつもの様にやはりその少女の告白を断ると、その小女から思わぬ言葉が出てきた。


「財前君と付きあっとるからですか?」













俺は同じ部活に所属している一つ年下で同性の財前光と付き合っている。
当然黙秘的に。
その理由は至極単純な物で、同性だから。
しかし隠しているといっても所詮中学生だ、ただ大っぴらにイチャ付いていないだけで、仲の良い奴等であったら簡単に分かってしまう様な、そんな隠し方でしかない。
それでも今まで噂の一つも浮かんで来なかったのは、同じテニス部奴らのお陰だと思う。
彼らは分かり易い俺達の関係なんてとっくに気が付いて居ただろうが、そんな事を誰一人勘繰るような事をしてきた事は無かった。
そう。それに気付いて、その事に甘えていた自分が今回の事を招いたのだろう。
俺がもっとしっかりとしていれば。
「白石部長。」
「……ん?何や?」
考えに没頭し過ぎて財前が此方を見ている事に気が付かなかった。
顔を上げると財前が真剣な顔をして俺を見ている。
「どないしたんです?」
財前には似合わない俺を労わる言葉。そう言えば、喫茶店に来て一言も会話をしかけていなかった、いつもと違うと思われても仕方が無い。
「今日女子に告られた。」
事実で、今自分を悩ませている種であるが、冗談交じりに言えばきっと冗談にしか聞こえないと思って俺はそう言った。
「へえソレは良かったですね、色男。」
すると財前はソレを冗談にちゃんととってくれた様で、俺はホッと胸を撫で下ろす。
完璧ではないが、財前の意識をずらす事は出来た。
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