100題

□沈むテンション
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「レズって隣どおしで座るんですって。」
「………はあ?」
財前の言葉が唐突過ぎて間抜けな声が出た上に頭が付いていかない。
財前はまあ確率的に多いだけっちゅう話なんですけど、とか言って一人話を先に進めている。
「いや、待て待て待て待て。」
「何です?」
珍しく動き続ける財前の言葉を少しだけ勿体無いと思いながらも話に付いて行けないという事を優先させ止めると、財前は特に気を悪くする訳でもなく俺に視線を向けた。
「いや、お前の話題が唐突過ぎて意味分からんのやけど。」
「やから単純な話でレズがこうゆう場所で隣通しに座る確立が多いっちゅう話。」
でスわ。と言われてもやはり意味がわから無い。
だがしかし、もう一度聞きなおすのは、何と言うか、プライド的に出来ないのだ。
自分が他者より理解力が勝っていると言う自負がそれをさせないのだ。
「前に、誰かに聞いたか何かで見たかは覚えとらんのですけど、レズはこうゆうトコ来ると、隣で座る事が多いらしいんでスわ。」
財前はそこで一度区切って目の前にあるコップをとって炭酸ジュースを飲んだ。
「で、俺的にそれは、単にこうゆうとこでも近くに居りたいからなんかなあ程度にしか思っとらんかったんでス。」
ああうん。やっぱり話は見えない。
「でも、今日思った事は、こうゆうトコでしか会えないんかなあって事です。」
「は?」
「学校でばれて同性キモいかなんか、言われたんでこうゆうトコでしか会わなくなった。とかかなあて。」
「…なんやそれ。」
思わず口から出たのではない。
言わずにはいられなかったのだ。
その理由は、財前の言葉がこれから起きてしまうのだろう状況を示しているから驚いたのではなく、余りに財前の言った言葉に腹が立ったからだった。
財前はこう言っているのだ、ばれない様、もう学校では話しかけるな。と。
ソレはつまり、下らない常識と言う名の偏見に理不尽ながら従えと言う事ではないか。
いや、俺が今腹を立てているのはソコではない。
俺が財前に対して怒りを覚えたのは、財前と俺の関係はそんな物だったのかと言う事だ。
偏見を持って俺たちを見る、下らない連中の目を気にして会話を減らしても支障の無い、そんな薄い関係だったのかと俺は腹を立てたのだ。
「お前は、俺にそうしろ言うとんのか?」
怒りを抑えることも出来ず、低い声で脅すかのような聞き方をする。
財前の表情に、俺を臆するような色は無い。その事に俺は益々苛立つ。
「答えや財前!」
店の中だと言う事も忘れ俺は声を荒げた。
しかし財前はやはり飄々とした顔をし、遂には笑った。
「部長、それ誤解ですわ。」
「はあ?」
笑い声を上げながらそう言った財前に俺は頓狂な声を返す。
財前は何が楽しいのか、腹を抱えながら笑い続ける。
俺はその状況について行けず財前の笑いが収まるまで、ただ間抜けな顔をして待っていた。


「そうしろなんて俺は別にそんな事言っとりませんよ?まだ俺の話終わっとりませんし。」
「………え。」
漸く笑い終わり、そして先ほどとは違った、にやりと笑った財前の顔を見て俺は青ざめる。
こんな時だけ突然頭の回転が早くなった自分が恨めしい。もしかしてさっきのは、早とちりだったんか?
「俺の話わぁー同姓が如何こう言う奴らの事なんか無視してぇ、仲良く行きましょね、って事を言いたかったですけど?それをどう言う風に誤解したんですか?」
「(最悪や!コイツの性格最悪や!!)」
わざと首を傾げて聞いてくる財前に腹を立てながらも顔が赤くなるのを止められない。
「〜〜〜〜〜〜〜ちゃ、ちゃんとわかっとった!そんなん、さっきのは冗談や!」
「くっ……!」
その言葉で財前の高が完全に外れたようでコレから先一生見れないかも知れない爆笑が始まった。
言った後に後悔しても無駄なのは知っているが、目の前で顔が赤くなるまで笑われたら後悔をしないわけが無い。
財前とは違う意味で俺の顔も赤みを増す。






ああ、今度から人の話は最後まで聞くようにしよ。








沈むテンション
(あ〜末代までの恥やあぁぁ……。)




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猪突猛進な白石の空回り
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