100題

□子供染みた遊びもたまには悪くない
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いちにいさんし、ごお……ろく。
外に降る雨に窓から腕を伸ばして雨音を数える。見た感じでは雨はとても降っているのに私の腕にはポツリポツリとしか当たらない。だから腕もあまり濡れない。
昼休み、お昼を終わらせた私は雨が降り退屈な中そんな一人遊びに興じていた。
濛溟とした雲が光を遮断していて、昼なのに外はとても薄暗い。が、でも教室の蛍光灯で照らされた薄明かりより明るい、どこか昼の明るさのある外を見て雨が光を反射してきらきらと光っているのだろうかと考える。
六月の学校には紫陽花が咲いていて、小さな数の花々が雫を弾いて輝いているのが私の居る場所からよく見えた。
雨は今日の目覚めた時からずっと降り続いている。どのくらい大きいのだろうか、今頭上にあるあの灰色の水蒸気の固まりは。
雨がポツリとまた腕に当たった。私はまた一つ大きな数を呟く。
ぱしゃぱしゃと水溜りが遊ぶように音を発する。
テニスコートには窪みが沢山あるようで、水溜りが沢山出来ている。きっと今晴れたら放課後コートの整備で時間を沢山浪費してしまうんだろうなと、神尾君や内村君辺りが文句を言っている様子が浮かんで、口元に笑みが浮かぶ。きっと伊武君も沢山ぼやきながらやるんだろうな、と。
いつもなら彼らは昼休みもテニスの練習をしているからお昼はいつも眺めているけれど、今日は雨でさすがに彼らもテニスをする事は無かった。
だから私は子供のような遊びをひたすらしているのだ。
「何してんの?君。」
唐突に掛けられた声に驚いて私の肩は大げさに跳ねた。
その声の主が伊武君だったからだ。
別のクラスで話なんて殆どした事なんて無かったから、その上、声を聞くときは殆どぼやいている時ばかりだったので、まともな声量の声を聞いただけで驚いたのだ。
「え、えっと、雨の数を数えてたの。」
必死に驚いた事をひた隠すように、早口に質問に答えると、伊武君は不毛だね。と言った。
「あ、そうじゃなくて、腕に当たった雨の数かぞえてて…。」
伸ばしていた手をもう一つの手で差して、何を必死になっているのか分からないけれど、私は必死に伊武君に説明する。
伊武君はふうん。とだけ答えて、踵を返して教室から出て行こうとした。
「あ、あの、伊武君、何でわざわざこの教室に入ったの?」
私は始めから気になっていた事を聞く。
伊武君は一瞬私の顔をじっと見てから廊下を指して、ココの教室の前を通ったら君が楽しそうになんかやってたから気になっただけ。と答えた。
私はそんなに楽しそうだったのか、と自分に対して驚き、伊武君がその事に気がついてくれた事に嬉しさが込み上げた。




子供染みた遊びもたまには悪くない
(君が見つけてくれるなら)

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