100題

□優しい言葉が胸を刺す
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「お前マジでうぜえ。」
今日委員会で掃除を休んでしまったので、放課後一人で掃除する事になった俺は、先ほどまで掃除をしていて、掃除を終えて帰ろうと人気の無い廊下を歩いていたら、同じクラスの切原に肩が当たってしまった。
肩がぶつかっただけでそんなに嫌悪感を覚えたのかと俺は素直に申し訳の無い気持ちになったので、肩ぶつかってごめん。と、素直に謝罪の言葉を言うと、切原は眉根を寄せて不機嫌そうな顔になってしまった。
俺は言い方に問題が有ったのだろうかと思って、本心本意でもう一度謝ったが、やっぱり切原の表情は変わらない。
俺はそれでどうしたら良いのかが分からなくなってしまって、やっぱり謝った。
しかしやはり俺は何かがいけない様で、切原は怒鳴った。
「てめえのそう言うとこがうぜえんだよ!!」
「うん。ごめん。」
そっか、こういう所がうざいのか。と思いながら、ごめんな。と謝ると、切原は何で謝んだよ。と言った。
俺が、切原に悪いと思ったからだよ。と切原に素直に答えると、切原は何でお前は理不尽な事言われたって悪口言われたってへらへら謝るんだよ。と言われた。
へらへら?俺は謝る時そんな顔をしているのか。
そんなのじゃ、切原が謝られても不機嫌そうな顔をするわけだと一人納得する。
「ごめんな。」
もう一度俺は謝った。
そしたら切原に殴られた。
廊下に倒れて切原を見れば、切原は驚いた顔をしていた。無意識に殴ったんだと思う。
「悪ぃ。」
「ううん。俺こそごめん。」
「…謝んな。」
切原はそう言って俺の口を塞いだ。
「お前はそうやって、色んな奴に謝って……お前悪く無いのに謝って、苛つくんだよ、見てて、ホント……。」
切原はそう言いながらうな垂れた。
俺はごめん。と謝った。口を塞がれていて、声にはならなかったけど。
「お前が謝ってる姿見ると、ホント嫌になんだよ。」
ごめん。
「お前悪い事なんて何もしてねえじゃん。」
ごめん。
「宿題忘れた奴にノート貸して帰ってこなくて怒られた時も、今日だって委員会有って掃除休んだのにサボりだって言いがかりつけられた時も、理由言わねえで、何もかんも全部謝って、お前は、いつも正しくても正しくない奴らに謝って、馬鹿じゃねえ?ホント馬鹿だよ。」
切原の言葉は、俺を思っての言葉で、そんな俺を思ってくれてる奴に俺は、こんなに悲しそうな声を出させてるなんて、何て最悪な奴だろうと思った。

俺は切原の手をどかした。





優しい言葉が胸を刺す
(ホントに……ごめんな。)

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