100題

□繋いだ赤い糸をはさみで切る
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じゃきん。
そんな擬音で俺と千石の小指を繋いだ赤い糸は無残にも切りおとされた。



繋いだ赤い糸をはさみで切る



千石はよく俺の手をいじる。
ただ指を絡ませたり弄ぶだけなのだが、それだけの行為をただ何十分といつも行う。
そして今日も千石は橙の髪を揺らしながら俺の手を弄んでいる。
そんな千石を、読書をしていた俺は特に気にする事もしていなかったのだが、指に千石の指以外の感触がしたので俺は本から視線を自身の手に移した。
「お前、何やってんだよ。」
「今日家庭科で余ったの。」
俺の小指に赤い刺繍糸の様な糸を巻く千石は淡々と答えた。
千石の回答はあからさまに噛み違っているが、理由はともかく大体は理解をした。
つまり、今日家庭科で余った赤い糸を何と無しに持っていた千石は、今唐突にその存在を思い出し、そして理由は分からないが俺の小指に巻きだした。なんて所だろう。
千石とはそんな奴だ、唐突に意味の分からない事を実行する。
本当に、マジで意味が分からねえ奴だ。
そして冒頭へとゆく。
俺の指に赤い糸を巻きつけ、その反対の端に自分の指も括りつけ、一回手を止めたと思うとどこからか出てきたはさみで赤い糸を半分に切りおとしたのだ。
「お前は何がしてえんだ。」
「ん〜えっとね……。」
千石ははさみで糸を切った後にまだやる事があるらしく、まだ俺の小指と自分の小指で何かをしている。
橙の頭が邪魔をして分からない。
「ん、っしょいと、よっす。」
そういった意味の分からない声をあげて千石は顔を上げた。
「んだコレ。」
俺と千石の小指は、また再び繋がれていた。
しかし、切れた糸が戻っているのではなく、リボンだか蝶々だか結びをされた状態で、だ。
「あのね〜俺と跡部クンの関係ってこんな感じでよくね?って言う主張。」
「意味がわからねえ。」
満面の笑みで不可解な発言するなと俺が橙の頭を叩くと、千石は非難の声をあげた。
しかし俺が意味分からないと言うのは予想通りだったのか、簡潔に俺の求める答えを発した。
「つまり、俺と跡部クンは、いつでも切れる関係でいたいの。」
そう言って千石は切れた糸の端を引いて再び赤い糸を二つにさけた。



繋いだ赤い糸をはさみで切る
(僕をソレほど思わないで。)

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