水下

□置き去りプレゼント
1ページ/3ページ






「誕生日おめでとうございます。」
何故か六角の校門に立っていた日吉君は、突然そんな言葉を言った。
「あ、ああ、ありがとう…ございます……。」
そんな日吉君に俺は恐縮しながら、そんな返ししか出来なかった。








置き去りプレゼント












突然学校の校門前に立っていた日吉君を見て俺は一瞬自分の視力を疑った。
春に測った時視力は2.5だったが、約半年でそんなに一気に視力は低下してしまうのか!と
それくらいに日吉君の突然の登場に驚いたのだ。




今日俺は、下校時刻がとても遅れた。
それは今日俺の誕生日だと知っている女子からの大量にプレゼントが渡されそうになって、全員のプレゼントなど貰ったら家に帰る事も出来なくなる為それらの女子を避けていたからだ。
俺の下校する時点で日はもう傾きだしている。
日吉君がもし六角の六限目終了時からこの正門の前で待って居続けたとすると、それはとても待つ事が嫌いな日吉君には耐え難い拷問みたいなものだっただろう。
俺が待たせていたわけではないが、罪悪感がすこし湧く。

と、そんな事を考えて日吉君を見ていると、日吉君はじろじろと俺の姿を見ている。
何か変なものでもついているだろうか?いつも会う服と同じはずだけど?
制服の衣替えの時期だけれど、今はまだ学ランを着なくてもいい調整期間なので、俺はいつもと同じワイシャツ一枚着ているだけだった。
変な所なんてないと思うけど……。
「あの、日吉君、俺に何かついてる?」
「いえ、別に。」
自分の中でうだうだと考えていても結局は思いつかないだろうと諦め、俺は素直に日吉君に尋ねることにした。
すると日吉君は今まで俺に向けていた視線を移動させ、素っ気なく答えを言うと、歩き出してしまった。
「あ、待ってくれよ、日吉君。」
彼で言う普通の少し速めの歩きに俺は駆け出して並ぶ。
日吉君はそれに合わせて歩調を緩めた。
こういうトコで俺は日吉君の優しさを痛感する。
だけど髪に隠されたするどい眼差しに不釣合いなさり気ない優しさが本当に不器用だなあ。とも思う。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ