水下

□君の名を呼ぶ
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「ねぇ、日吉。」
ポツリと呟くように名を呼んでも、彼はちゃんと聞き取ってくれて、こちらを向いた。

「あの、さ、……。」
言葉を紡ごうと口を開いても、それ以上何も言えなくて、俺はソファの上に脚をあげ、膝を抱え込んだ。

日吉が心配そうにこちらを見てくれているんだろうな、って、そんなの見なくても分かって、……だから、…今言わなくちゃいけないんだって、分かって…。



「日吉、………別れよう?」
「何、…言ってるんだ?」

驚いた顔をした日吉に、多分泣きそうな笑顔を見せて、口付けた。


「ばいばい。若。」
一度も呼んだ事の無かった名前は、発した後口に妙な違和感を残した。

ばいばい。もう一度心の中で繰り返すと、俺はもう振り返らなかった。






君の名を呼ぶ
(最後だから、綺麗なんて言わない、ただ心に残るように。)
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