水下

□頭一つ分の余裕
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#「頭一つ分の余裕」




牛乳を飲んでも身長なんて伸びるわけがない。
実際、現在進行形で俺の身長は伸びてない。







あの人に子供あつかいされない位の身長になる為に牛乳を飲んでいた俺は、牛乳の飲み過ぎで、お腹を壊した。
「(身長も伸びないし、お腹壊すし、良い事ないじゃん。)」
べっどの中でお腹の痛さに唸ったり、悩んで唸ったりしている俺はいつの間にか、時間がたっている事に気付いていなかった。



バン!!

突然開いたドアに驚き、そちらを見ると、更にそこに居たは人物に驚いた。
「………白…石。」
そこには今ココにいるはずの無い白石がいた。
いつもの優しそうな微笑は消え、必死な、とても見る事が稀であろう顔をして部屋に入ってきた。
「越前!!大丈夫か!倒れたって聞いたんやけど!」
「いや、別にそんな大袈裟な事じゃないけど。」
いつもの余裕など見る影も無く、白石は俺の顔を覗き込んだ。
「俺にとったら一大事や。」
「ソレって、俺の事が好きって意味?」
そう言うと、白石はトマトの様に顔を赤くした。
「そ、そんな訳、無いに決まっとるやろ!!」
「………。」
そんなの嘘って分かりきってるけど、それでも言葉で聞くのは気持ちのいいものじゃない。
「俺はアンタの事が好きだよ。」
そう言うと、もう倒れるんじゃないかって位やっぱり顔を赤くした。

いつも余裕があって、大人っぽい白石になんだか追いついた気がして、少し嬉しく、笑うと、不意に視界が暗くなる。
「んっ……」
唇に感触があり、それが無くなると視界が戻ってきた。
何があったのかを頭が理解すると、顔が熱くなるのを感じる。
「マセガキにお仕置や。」
「〜〜〜〜。」




俺よりも高い位置にある、俺からじゃ届かない顔は、いつもより子供らしくても、やっぱり背伸びしても届かない。



「(あとどれ位頑張ったら、アンタに追いつけるんだよ……。)」





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