MSCアナザ-エピロ-グ〜SUMMER Ver.〜

□再会
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津田沼、桜子、明日香、誉田、
そして君津の5人が、思い出多き大学
(誉田と君津以外は院)を卒業してから、
早2ヶ月が過ぎた。

津田沼は職員として大学に残り、
桜子はあの手この手で教師の夢を叶え、
明日香は周囲に流される儘に詩人となり、
誉田は密成とお笑いコンビを組み、
そして何と君津は、
マルテレビのアナウンサーとなっていた。

そんな5月も末のある日の夕方。

津田沼が、
仕事を終えて家路に就こうとした時、
彼の携帯電話に、一通のメールが入った。

送り主は、
卒業以来疎遠になっていた桜子であった。

「桜子です。 お久し振りでごめんなさい。
今から会えないかな?
海浜幕張の駅前で待ってます。」
という本文に懐かしさを感じた津田沼は、
「解った。 今行くよ。」と返信すると、
海浜幕張の駅前へと向った。

そして駅前に着くと、男に言い寄られて
迷惑そうにしている桜子がいた。

久し振りに会った桜子は、
大学にいた頃の破天荒さが薄れ、
大人の女の色気をほのかに漂わせていた。

津田沼はそんな桜子に
「桜子さん!」と手を振り声を掛けると、
桜子も又津田沼の声に気付き、
「津田沼くん!」と手を振った。

そして桜子は津田沼の方へ駆け寄ると、
「来てくれて助かったわ。
実は、
同僚の船橋先生に口説かれて困ってたの。
ほら、あそこにいるデカい人。
それで頼みがあるんだけど、
恋人の振りをしてもらえないかしら?
恋人がいると思わせて、私を諦めさせたいの。
お願い!」と、津田沼に耳打ちをした。

すると桜子は、
いかにも恋人の様に津田沼と腕を組むと、
その男・船橋哲也に対し、
「紹介します。 大学の時の同級生の、
津田沼聡さん。」と津田沼を紹介した。

そして津田沼は船橋に軽く頭を下げ、
「初めまして、津田沼聡と申します。
いつも桜子さんがお世話になってます…」
と挨拶をした。

すると船橋は津田沼に対し、
「つかぬ事をお訊きしますが、
津田沼さん、あなたは今、
三咲先生とどの様なご関係なんですか?」
と尋ねた。

津田沼は「どういうご関係って、
見ての通りですが…」と桜子に寄り添うが、
船橋は全てを見透かした様に、
「騙されませんよ。
恐らく三咲先生に入れ知恵されて、
ダミーの恋人役でも頼まれたんでしょう。
私がそれくらい見抜けないとでも
思ったんですか、三咲先生?」
と勝ち誇ったかの様に言い、
桜子は俯きがちに船橋から目を逸らした。

船橋は更に、
「三咲先生にそこまで見くびられていたとは、
私も情け無い。 まあいいでしょう。
いつか必ず、
三咲先生を振り向かせて見せますよ。
それまで精々、
思い出話に花でも咲かせるんですな!」
と言い残すと、
高そうな外車に乗って去って行った。

津田沼はそれをただ呆然と見送りながら、
「ごめん、桜子さん。 力になれなくて…」
と謝ると、桜子も又
「いいのよ、津田沼くん。 私こそごめんね。
2ヶ月振りに会ったのに、
嫌な思いさせちゃって…」
と謝り返した。

するとそこへ、明日香と矢切が通り掛り、
2人に声を掛けた。

桜子は卒業後、明日香宅に居候……、
もとい、ルームシェアしていたのだが、
矢切に会うのは、
津田沼同様2ヶ月振りであった。

そして4人は、
近くのファミレスで一緒に食事をした。

4人は、2ヶ月間の空白を取り戻そうと、
色々と話し合った。

中でも饒舌だったのは、
最上級生になった矢切であった。

明日香と桜子の居ない大学の事、
誉田と密成が各番組に引っ張り蛸な事、
そして君津がマルテレビの新人の中でも、
特に高い評価を受けている事など…。

桜子も、船橋との事を話し、
そこまで一途に思ってくれる人がいる事を、
矢切に冗談半分で羨ましがられていたが、
桜子が終始大人しかった事が、
矢切は少し心配になっていた。

帰り際、桜子は津田沼に、
「また電話してもいい?」と尋ねた。

津田沼は、
「うん。 何かあったら、いつでも電話して。」
と答えた。

その瞬間、桜子の表情に明るさが戻ったのを、
津田沼は気付かなかったが、
矢切は見逃さなかった。

それが何を意味しているのか、
矢切はすぐに理解出来た。

そして4人はそれぞれ、
帰宅の途に就いていった。
 

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