MSCアナザ-エピロ-グ〜WINTER Ver.〜

□クリスマスの魔法
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そしてそれから4日が過ぎた、
12月24日、クリスマス・イブ。

桜子は矢切からの「メリクリです!
今年は特別な人と、特別な夜にしましょう!
必ず、プレゼントを忘れないで
持ってきて下さいね!」
と書かれた携帯のメールに促されて、
マキと由貴緒の協力の元、
今まで着た事も無いドレスと、
した事も無いメイクで、
徹底的に女らしさを演出し、
矢切のメールに書いてあった、
一流高級ホテルでのクリスマスパ-ティ-会場へと
足を運んだ。

そしてホテルの玄関へと3人は到着するが、
既に乗り気なマキと由貴緒に対し、
桜子は自分がこんな所へ来るのは
"場違い"の様な気がしてしまい、
足が竦んで動かない。
そこをマキに引っ張られ、
そして由貴緒に背中を押され、
3人は中へと入っていった。


そしてマキは、
フロントに3人分の招待状を見せると、
パーティー会場の部屋のドアを開けた。

そこは、
今が不況である事を全く感じさせない程、
着飾った男と女で溢れていた。

その中で誰よりも輝きを放っていた桜子は、
マキと由貴緒が嫉妬する程、
次から次へと男達から声を掛けられるが、
桜子は浮かない顔をして、
「待ってる人がいますから…」の一点張りで、
逃げ回ってばかりいた。

すると男達はその度に、
「何だよ、男いんのかよ!」
と言いたげな表情で、
マキと由貴緒には目もくれずに去って行き、
それが余計に二人を嫉妬させた。

そして、桜子は奥の方に、
津田沼の姿を見つけた。

津田沼もやはり同じ様に、
場の雰囲気に戸惑っていた様子だったが、
彼も又桜子に気付き、
「あっ、桜子さん!」
と手を振り声を掛けるが、
桜子はその声を聞いた途端、
心臓の鼓動が聞える程胸が高鳴り、
気が動転して、
思わず右手のシャンパンを一息で飲み干すと、
駆け足で会場を飛び出してしまう。

しかし、慣れないドレスとハイヒ−ルと、
四日前の捻挫が足を止め、
思う様に走れない。

そうこうしている内に、
後を追って飛び出して来た津田沼に、
フロント前で右手を掴まれてしまう。

「離してよ!!」と、
桜子は津田沼の手を振り解こうとするが、
津田沼の握力が、
今迄の非力さが嘘の様に思いのほか強く、
振りほどけない。

津田沼は桜子に、
「一体どうしたのさ、桜子さん!
僕を見るなり、急に飛び出して!
そもそも、どうしてここに?」と、
逃げた理由と此処に来た理由を尋ねるが、
桜子はつい「矢切に誘われて、
断る理由も無かったから、
とりあえず来てみただけよ。
津田沼くんこそどうしたの?
一晩の彼女でも作りに来たつもり?」と、
心にも無い事を口走ってしまう。

津田沼が
「僕も同じだよ。矢切さんに誘われて…」
と言った矢先、
矢切が入口から中に入って来た。

すると矢切は二人の方へ寄って行き、
桜子に「はいこれ! お二人の為に、
最上階のスウィート取っときました!」
と鍵を渡した。
そして、
「それじゃ私は、今夜はここで仕事ですから!
お二人とも一応、見てってくださいね!」
と二人に告げると、
足早に関係者入口へと消えていった。

二人は鍵を手に、暫く顔を見合せるが、
もう引っ込みがつかなくなったのか、
会場へと戻り、
矢切のステ−ジを見ていく事にした。
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