MSCアナザ-エピロ-グ〜WINTER Ver.〜

□出産
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桜子から津田沼へ


子供の頃の私は、コンプレックスの塊で、
その癖惚れっぽくて、
告ってはフラれを繰り返してた、
今思えばとんでもなくませた子供だった。

そんな私にも、
高校の時に初めての彼が出来た。
それでも今振り返ると、余りにも早く
"男と女の一線"
を越えてしまったのがいけなかったのね。
あの頃の私は、早く大人になりたい一心で、
彼の子供を身ごもった。
そしてそれを望まなかった彼に、
裏切られて、捨てられた…。

その時私は、
「恋をしたせいで心も体も傷つくのなら、
私はもう恋なんかしない」と心に決めた。
そして私は、強い女の仮面を被ったまま、
あなたに出逢った…。


「好きになるなんて思わなかった」
ってあの時言ったけど、
きっと本当は、一目見たその瞬間から、
あなたに魅かれていたのかも知れない…。

それでも私は、
ガラスの心を鋼の体で覆い隠して、
友達として、あなたと接した。
でも本当は、「一点の曇りも無いあなたと、
汚れきった私なんかじゃ、
どうせ釣り合う筈なんか無い…」って、
あなたを諦めようとする気持ちを、
食い止めるのに必死だったの…。


私が本当の自分に戻れるのは、
みんなが寝静まった真夜中だけ。
勢いで一枚だけ撮った、
あなたとの2ショットの写真を眺めては、
声を殺して泣いてばかりいた。


やがて時間ばかりがいたずらに過ぎて行き、
私は「卒業」という二文字に、
真綿で首を絞められる様に追い詰められていった。
私はいつの間にか、あなたの事を
"私だけのもの"の様に思ってしまっていたの。
でもそれは、とんだ思い違いに過ぎなかった…。


どんなにあなたの近くにいても、
友達は所詮友達。
卒業の時期が来れば、
私達は離ればなれになってしまう…。
私にはもう、
あなたと離れて一人になるなんて、
我慢出来なかったの。
私以外の人が、あなたの隣にいるなんて、
想像出来なかったの…。


あなたに出逢う前も出逢ってからも、
私に言い寄って来る男の人は沢山居たわ。
私の体を通り過ぎて行った男(ひと)も、
5人や10人じゃ無かった。
でもあなた以上の人は、
ただの一人も居なかった。

その時、私は初めて知ったの。
「私は、あなたに出逢えた事が、
そして、あなたと一緒にいる時が、
何よりも幸せだったんだ」と…。

そして、
「私には、あなたじゃなきゃいけない。
あなた以外の男性(ひと)は、
私にはありえない」という事も…。

私は、
私の中のあなたの存在の大きさを知って、
そして気付いてしまったの。
こんなにも私の心が、
あなただけを、ただひたすら一途に、
ひたむきに、まっすぐに、
強く求めている事に……。

そして、「私はあなたに守られていたんだ」
という事にも……。

『どうしてあなたじゃなきゃ駄目なの?』
と人に訊かれたら、
きっと私はこう答えるでしょう。
「私が恋愛ごっこなんかじゃ無く、
本当の意味で心から好きになった人が、
あなただったから。
そしてそのあなたの優しさが、
凍り付いてた私の心を溶かしてくれたから」と…。

あなたは私に、
『君に出逢えて独りじゃ無くなった』
って言ってくれたわよね…?
それは、私も同じよ。
あなたに出逢う前の私は、
どんなに大勢の中にいても、
ずっと孤独を抱えながら生きてきた。
でも、あなたに出逢った事で、
私は例え一人の時でも、
孤独を感じる事は無くなったの。
どんな時でも、あなただけは、
私を信じてくれたから…。

あなたは、偽りの愛に騙されて、
悪魔に魂を売り渡した私を、
もう一度買い戻してくれた人。

自分の事ばかり考えて生きてた私に、
人の為に生きる事の尊さを、
教えてくれた人だから…。

あの日、意を決して、
私があなたに思いの丈の全てをぶつけた時、
本当は私、フラれる事を覚悟してたの。
あなただって、まさか私に告られるなんて、
爪の先程も思ってなかったでしょうね。
だから私は、あなたと一つになれた事が、
心の底から嬉しかったの。
その後の事なんて、
考えられなくなるくらい、
気持ち良くなれたから…。


それからの私は、
今までの見栄も意地も強がりも全て捨てて、
あなたに相応しい女になる事に決めたの。

あなたと同じ朝日を見て
「おはよう」と言い合い、
そして夜は、あなたと同じ月を見て
「おやすみ」と言い合える、
そんな二人に、私はなりたいと思ったの。

あなたが喜んでいる時は、
私も一緒に心から笑いたい。
あなたが苦しんでいる時は、
その辛さを薄れさせてあげたい。
あなたが怒っている時は、
その怒りを鎮めてあげたい。
あなたが悲しみに暮れている時は、
その涙を拭ってあげたい。

桜咲き、やがて新緑薫る春。
全てを溶かす、灼熱の夏。
寂しさが尚一層、
二人を離れられなくさせる秋。
全てを凍らす、極寒の冬。
その全てを、あなたと共に分かち合い、
越えて行きたい。
あなたとなら、越えて行けると信じてる。

あなたと一緒なら、
例えその先がいばらの道でも、
この世の果てでも、
私は迷わず、ためらわずに付いて行く。
付いて行ける。
私にはその方が、
独りぼっちで安全な道を進むより、
ずっとずっと幸せだから…。

"バカップル"だと思われてもいい。
だって、バカになれるくらい、
人を愛せると言うのは、
とても立派で、素晴らしい事だと、
あなたを愛して解ったから。

"私は独りじゃ無い"、
そう思える人がいるだけで、
こんなにも心細さも迷いも全て消えて、
穏やかで幸せな気持ちになれる。
私がそう思えるのは、
全てあなたのおかげだから…。

だからもう二度と、
あなたから離れちゃいけない。
むしろ、私はもう二度と、
あなたから離れられない。 離れたくない。
私が探し続けていたのは、
あなただと解ったから。
"あなたの為の私になる"って、
そう固く誓ったから…。


私の余りの急変ぶりに、
あなたはきっと戸惑ったでしょうね。
それでも私は、あなたの傍にいれば、
高校時代の悲劇を忘れられたの。
ただ、それだけで良かったの…。
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