立海嫌われ連載
□三年後
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「皆ストレッチは終わった?」
幸村がガットをギチギチと直す。だだっ広いコートに響く程、幸村が喋る時は静かになる。
「じゃあそろそろ走ろうか」
一斉の返事と共に俺達は走り出した。バタバタと各々自分のペースで走る、持久力なら俺の土俵だ。あっという間に差がつき始めた。先頭はやはりレギュラーが占め、それを引っ張るのが俺だがうかうかしてはいられない。真田や柳も最近は持久力に力を入れてトレーニングしているらしい。
「ジャッカルはえー」
「丸井はもう少し体重を減らした方がいいんじゃない」
「幸村君まで」
「運動はしているんですから間食を無くせば自然と痩せますよ」
「丸井には無理じゃ、なんせ」
「デブン太先輩っスからね」
「くっそ赤也覚えてろよ!」
後ろでの言い争いを聞きながらペースを上げた。それにすぐさまついてくるのは真田だ。
「おっと、飛ばすねえ」
「持久力はいつまでもお前の十八番ではないぞ」
その言葉が俺の闘争心に火を点けて、結局そのまま俺が一番でランニングを終えた。
「ジャッカル、ペース無茶苦茶すぎ」
ぜーぜー息を吐きながら丸井がタオルを額に当てた。皆がデブデブ言う所為で何だか丸く見える。それを言うと本人は落ち込むのでそっと心の中にしまっておこう。
「最近あちーなあ」
「そろそろ夏になってくるな」
「もうあれから三年も経つのか」
そうだ、もう三年。言葉にしてしまえば簡単だが色々な事があった。とりあえず俺達レギュラーメンバーはあの頃と変わらず今もこうしてテニスをしている。
本当にいいチームだ。また皆で全国を目指せる。
「休憩は終わり、練習始めるよ」
幸村の一言で皆コートに散らばる。すぐにボールの音が聞こえる。俺もコートに入った。
何も起こらない平穏な日々、皆それぞれ心に負った傷を癒し新しい絆を作る。充実した日常だが何かが足りない、そう思うのはきっと。
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