かのちこさんのお部屋

□かんちゃんと汽車の旅
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しゅしゅしゅしゅ。
白い煙を煙突から吐き出した汽車は、出発を今か今かと待っている様である。
『間もなく、汽車が出発します。ご乗車の方は席にお付き下さい』
ホームには出発を伝えるアナウンスが鳴り響いた。
そこに、桃色の帽子に薄い黄色地に小花を散らしたパーカー、赤のジャンパースカートにベージュのスパッツを履き、白地に花柄のサボを履いた三歳位女の子が、兎を模したポシェットを斜めに掛け、手には桃色の上着を持ち、小走りに汽車へと近づいた。
ホームと汽車の間には段差が有り、乗る際に車掌が抱き上げてくれた。
閑散とした車内のボックス席の窓際にぽつん、と座り、窓枠から出ている小さな机にポシェットから大事そうにおやつとお茶を取り出した。
それらを出すと、ポシェットはかなり痩せた用に見える。
女の子は、机に載せた小さなチョコの入ったパイ、ラムネ、クッキーを嬉しそうに見つめた。
ゆっくりと動きだした汽車は、外の景色も変えてゆく。
駅を出て暫らくすると、遠めに桃色、黄色、白と、色々な色の花が目に入った。
それらを、おやつを食べながら見つめた。
青い空には、ぽっかりと白い雲が浮かんでいる。
女の子はそれが鯨の様だ、と思った。
鼻歌を歌いながら、ポシェットから小さめの手帳と六色ボールペンを出し、絵を描いた。
ポシェットからはぬいぐるみの耳が覗いている。
絵は、背の高い兎と、二つの丸っこい兎が笑顔で手を繋いだものであった。
それは、親子なのかも知れない。
笑った太陽も書き入れ、満足そうにそれを見つめた。
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